第27回
京絞りを識る
絞りの柄や種類、着る季節や格は?
大好きなのに知らないことだらけ!
それは「京絞り寺田」さんの展示会にお邪魔したときのこと。会津の鶴ヶ城にある八重桜で染められた、総絞りの訪問着を見た瞬間、絞り好きのE子は幸せに包まれました。
女性を美しく見せる柔らかなニュアンスを含んだ美しき色。そしてさまざまな絞りの技法が集結した華やかさ! ああやっぱり素敵。
でもそういえば絞りのこと、ほとんど知らずにおりました。新人きものライターとして、これはいけません! そこで今回は寺田さんに京絞りについて教えていただくことに。
今回お話を伺った寺田豊さん。今さらこんな質問は恥ずかしい? と思う内容にも穏やかな笑顔で分かりやすく答えてくださいました。お話を伺ったのは、『きものSalon』本誌でもお馴染み「京絞り寺田」を主宰する寺田豊さん。
ちなみに『
きものSalon 2018-19秋冬号』ご褒美きもの特集で、編集部が浅田真央さんにお誂えをした、なでしこ色と菖蒲色で染め分けた桶絞りのきものや、『
きものSalon 2019春夏号』の鮮やかなブルーが印象的だった「流星」という絞りのきものは、浅田真央ちゃんファンという寺田さんが制作してくださったんです!
多くの人が関わって一つの作品が完成。
絞りは“超(スーパー)”分業制でした!
寺田豊さん(以下、寺田)「いや、私だけで作っているのではないんですよ。私はデザインを描き、最終的にどう仕上げたいかを考えながら、どのような絞りや染めを施すかを考える役目です。実際に絞ったり染めたりするのは職人さん。絞りというのは、職人さんあってこそ、ですから」
寺田さんが制作総指揮を行い、染めや絞りなどの実作業は職人さんに担っていただくのですね。
寺田「しかも、絞りの技法それぞれに職人さんがいます。現在は3~40種類でしょうか。昔は120種類くらい絞りの技法があったんですよ」
技法の数だけ職人さんがいるなんて、絞りは“超(スーパー)”分業の世界ですね! ひとつひとつに高度な技術が必要だということが伺えます。
寺田「実は絞りの歴史は古く、さらに日本だけでなく世界中に古裂(こぎれ)という形で残っています。人間は染めてみよう、何か模様を入れようと思った時に、最初に絞ることを考えたのでしょう。いわば絞りは染織の原点です。
その後、絞りのきものが広く一般に着られるようになったのは大正末期頃。そこでさまざまな絞りの技法が生まれたようです。今日は数ある京絞りから代表的な絞りの技法をご紹介いたしましょう」
はい、ぜひお願いします。