先端技術を積極的に導入し、難治性不整脈の根治を目指す
治療が最も難しいのは失神や突然死の原因にもなる「心室頻拍」と呼ばれる頻脈性不整脈です。
同センターでは関東一円の医療機関から難治性の重症心室頻拍の患者を積極的に受け入れています。
心筋梗塞や心筋症に合併した心室頻拍にはカテーテルアブレーション治療が有効です。副島先生は心臓の外からアプローチする心外膜アブレーション治療の開発者であるブラジルのSosa博士の指導を受け、この治療を日本で初めて成功させました。
「治験を含め、最先端治療をいち早く取り入れ、根治を目指しています。また、安全で正確な治療を行うために三次元マッピングシステム(術前に撮影したCT画像の上に治療した部分を表示しながらアブレーション治療を行う)なども活用しています」。
一方、突然死を防ぐために植え込み型除細動器による治療を選択することもあります。
「ICDを植え込んだら終わりということではありません。ここから本当の治療が始まるのです」。
退院後、患者宅に設置されたモニター機器から送信されてくるICDの作動状況、不整脈や心臓の状態などを遠隔モニタリングし、必要に応じて薬剤を変更したりアブレーション治療を行ったりします。
デバイス専任看護師を配置し、患者が元の生活に戻れるようきめ細かく支援
また、ICD作動後には心のケアも必要です。
「雷に打たれたようだと表現する患者さんもいるほど、その衝撃は大きく、一度経験すると次の作動を怖がって日常生活を制限してしまう人も多いのです」。
そこで、デバイス専任看護師を配置し、できるだけ元の生活に戻れるようきめ細かくサポートしていきます。
「私たちの治療目標は患者さんのQOLの向上です。そして、こだわっているのは“ここで受けてよかった”と思ってもらえる総合的な治療の質です」と副島先生。
不整脈治療を受ける場合は技術に加え、アフターフォローもしっかり対応してくれる施設を選ぶことが大切です。
※この記事は、『家庭画報』2020年5月号取材当時の情報です。診療受付状況等は変更となっている場合もありますので、最新情報は公式ホームページ等でお確かめください。 Information
杏林大学医学部付属病院
東京都三鷹市新川6-20-2
- 杏林大学医学部付属病院 循環器内科 不整脈センター 案内 〔主なスタッフ〕不整脈専門医8名、デバイス専任看護師1名、臨床工学技士3名 〔主な連携先〕精神神経科、救急科、心臓血管外科など 失神外来/月曜(受付13時30分~15時30分) 初診時にほかの医療機関の紹介状を持参していない場合は、初診料とは別に選定療養費(5500円・税込み)が自己負担となる。受診の詳細については病院のHP「受診・入院のご案内/はじめての受診の方へ」をご覧ください。 受診の詳細はこちら>> 〔費用〕保険診療
【参考情報】 ●不整脈専門医を探したいとき 日本不整脈心電学会では、2012年度より不整脈専門医の認定制度を開始し、19年4月1日現在、全国で1049名が認定されている。同学会のHP(会員・医療関係者向け)では専門医名簿を公開している。 「日本不整脈心電学会/専門医名簿」 http://new.jhrs.or.jp/specialist-index/specialist-list/
取材・文/渡辺千鶴 撮影/八田政玄
病院の外観写真提供/杏林大学医学部付属病院
『家庭画報』2020年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。