現代を代表するデザイナーやアーティストが制作した東京2020公式アートポスター。その1点『五輪の雲』を手がけたのが、グラフィックデザイナーの佐藤 卓さんです。東京2020大会の延期が決まる少し前に行われた対談では新型コロナウイルスも話題に。それでも前向きに語り合ってくださった、お2人の笑顔と言葉をお届けします。
壁に飾られているのは、佐藤さん制作の東京2020公式アートポスター『五輪の雲』。見ているだけで心が浮き立ちます。お2人が表現しているのはポスターのキーワードの1つであるハート。松岡さん・スーツ、シャツ、チーフ/紳士服コナカ第22回
グラフィックデザイナー 佐藤 卓さん
穏やかな口調で「自分のデザインに満足することはありません」と話していた佐藤さん。佐藤 卓さん TAKU SATOH1955年東京都生まれ。東京藝術大学美術学部デザイン科卒業後、同大学院形成デザイン科修了。電通を経て84年に佐藤 卓デザイン事務所(現TSDO)設立。「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」 等の商品デザイン、国立科学博物館のシンボルマーク等を手がける。NHK Eテレの番組等を通してデザインの教育にも尽力。2017年より21_21 DESIGN SIGHT館長。東京2020公式アートポスター20点のうちの1点を制作。「スポーツを通して心を一つに」という思いを表現
松岡 今日、卓さんがデザインされた東京2020公式アートポスターを拝見して、勝手な見方かもしれませんが、苦しい状況下にいる今の僕たちに力をくれる作品だと感じました。5大陸すべてが心を1つにしてウイルスに立ち向かい、東京2020大会へ前向きに力強く進んでいく、そんなふうに見えたんです。
佐藤 すごく嬉しいです。このポスターを作ったのは去年の夏前で、当然ウイルスの問題など一切ない頃でしたが、歴史上、世界中が平和だったときなんて一瞬もないんですよね。国家間には常にさまざまな問題があります。それでもオリンピックのときはスポーツを通して1つになろうよという、まさに今松岡さんがおっしゃったことと、選手が自己ベストを目指して競い合う軌跡を表現したいと思ってデザインしました。
松岡 素晴らしいですね! 僕はポスターを拝見して思い浮かべたことがもう1つあるんです。それは、僕が「修造五輪」といっている言葉「元気」「ありがとう」「本気」「一所懸命」「笑顔」の5つが、それぞれ進んでいった先で1つの大きなエネルギーになるというイメージです。
佐藤 そんなふうに自由にイメージを膨らませていただけたら、見る人もポスターに参加できますよね。こちらが一方的に意図を伝えるのではなく、「見る人も参加できるビジュアル」というのが、21世紀のポスターのあり方なのかなと感じています。