“桑名の殿さん”も愛した名物「志ぐれ煮」
【貝増商店】
東海地方でメジャーなたまり醬油は魚介との相性抜群。しょうがと一緒にボイルしたはまぐりをたまり醬油に入れ、沸騰してから22分。分刻みでざらめや水あめを加えて仕上げる。桑名の殿さん 時雨で茶々漬け......で始まるお座敷歌にも登場する志ぐれ煮。
“時雨煮”と書くこともあり、時雨の頃に炊いたものが特に味がよいため名づけたという説もあります。
志ぐれ煮のお茶漬けと押しずし。「8月に行う石取祭は、山車が35台ほど出てとっても賑やか。夏のお祭りで食べるのが貝の志ぐれの押しずしです」とたゑ子さん。日持ちがするので保存食や土産物として古くから県内外の人に愛されてきました。
しかし桑名産はまぐりを使った志ぐれ煮の店は、実はほんのわずかです。
その一軒である「貝増商店」の主人、服部高明さんは競りの権利を持っており、自ら厳選したはまぐりを贅沢に使用しています。
志ぐれ煮の最大の特徴は、たっぷりのたまり醬油でさっと“浮かし炊き”をすること。
佃煮が貝1:汁1であるのに対し、浮かし炊きは貝1:汁5の割合で、短時間で味がいきわたり、ふっくらと仕上がります。
桑名産はまぐりの志ぐれ煮100グラム 2500円。はまぐりのうまみがたっぷりのたまり醬油「志ぐれたまり」250円(ともに税込み)は、冷ややっこや湯豆腐、炊き込みご飯の隠し味に。服部さんは特別に作った薄口のたまり醬油を、代々はまぐりを煮てきた煮汁に継ぎ足しながら使います。
気さくなご主人と話し上手な母たゑ子さんが親子で和気あいあいと作る志ぐれ煮は、うまみが濃縮した辛口の味わい。昔から変わらない伝統の製法です。
はまぐりびと(5)
「貝増商店」4代目主人
服部高明さんはまぐり歴:店を継いで25年。シュートボクシング、元全日本チャンピオン。
好きなはまぐり料理:志ぐれ茶漬け。地中海でもはまぐりがとれると聞き、世界のはまぐり料理にも関心あり。
はまぐりへの想い:昔は広範囲でとれて、江戸城にも献上されていたはまぐり。歴史あるはまぐりは桑名の宝物。
貝増商店 赤須賀店住所:三重県桑名市赤須賀市場町86-8
TEL:0594(22)4908
営業時間:8時30分〜17時30分
定休日:火曜
URL:
http://kaimasushoten.com/店頭で活けはまぐりの販売もしている。
表示価格は本文に税込みと記載のあるもの以外はすべて税抜きです。
撮影/本誌・坂本正行 取材協力/丸佳、大都魚類、鳥羽市立海の博物館
『家庭画報』2020年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。