絶景でおもてなし
──S邸(沖縄・伊良部島)
プールのライトブルーと海のコバルトブルーが重なる景色は、この家だけのもの。玄関からは見えず、短い廊下を抜けた先に、絶景がまさにこの写真のように視界に飛び込んでくると、ゲストから必ず歓声が上がる。ドラマティックな演出効果を織り込んでの設計。【Seaside House】
30メートルのパノラマビューが広がる伊良部島の海辺に建つ家
大判ガラスを採用することで実現した、幅30メートルにわたるパノラミックな空間は、鉄骨鉄筋コンクリート造のロングスパン梁により実現。陽が落ちた後は、室内の灯りがプールの水面に映り込む。「この家での楽しみは自慢の鉄板焼きテーブルでゲストをもてなすこと」
室内の壁面には地元の琉球石灰岩を使用。ソファはイタリア・モルテーニ社の「ラージ」。ゲストがリビングに足を踏み入れると、「わあ、きれい!」と必ず歓声が上がります。
幅30メートルのパノラマウィンドウの向こうに広がるのは、プライベートプールと青い海が重なる景色。
小さな浜に面した建物の外観は直線的でモダンなシルエット。日本でも有数の海の美しさを誇る沖縄県宮古島。そこから橋でつながる伊良部島にあるSさんの別邸です。
普段は東京で会社経営者として多忙な日々を過ごすSさんは、10年前に出会った伊良部島の自然にひと目惚れ。慎ましくも美しい浜に面した土地を購入し、夢の住まいを建てたのです。
母屋には主寝室と2つの客室があり、さらに独立した離れに2つの客室を設けて、最大16人を迎えることができる。「過ごす人によって使い方が変わる、ニュートラルな空間でもあります。それがこの家の面白さ」とSさん。写真/トロロスタジオ 谷川ヒロシモルディブなど内外の多くのリゾート滞在を経験したうえで、伊良部の海の素晴らしさを評価するSさんが愛するこの家は、誰が訪れてもくつろげる、おもてなしの工夫に満ちています。
まずはエントランスの動線。玄関からすぐに海が見えるのではなく、短い廊下を経て、ゲストを大きなリビングに導きます。その一瞬の間が、絶景への感動をさらに深めてくれます。
リビングからダイニング、キッチンへと空間がつながります。
特に注目は大きなパーティ用のキッチン。中央に2メートルもある大きな鉄板焼き用のプレートが備わった特注仕様です。
プールサイドやリビングでカクテルタイム。プールから水着のままでもこの開放的なキッチンには出入り自由。奥のリビングとはガラス戸で間仕切ることができる。テラスのガラス扉は全開にでき、プールや海を眺めながら料理ができます。
主に料理の腕を振るうのはもちろんSさん。地元の野菜や生産者から取り寄せた特上肉を、230度に熱した鉄板で焼いて振舞います。鉄板焼きテーブルを囲むようにゲストが座り、会話も弾みます。
地元の食材や飲み物がおもてなしの大切な要素と考える思いが、このキッチン空間に生かされているのです。
東京で美食を楽しむSさんは、「食材のうまみを引き出すのは鉄板の厚み」と、プロの厨房用の22ミリ厚の鉄板を特注。鉄板焼き用のカービングナイフや鉄べらをキャビネットに収めて。バーキッチンには、沖縄の「オリオンビール」の専用サーバーが備わり、ゲストがセルフサービスで飲み物を楽しめる。ローメンテナンスのプールの普及は、ろ過機能の進化が要因。