非日常へと誘う──
もてなしの仕掛けがいっぱい
フライングベッドベッドを吊るための構造や台風対策に苦労しながらも完成した、夢のベッド。Sさんがこの家で心がけているのは「とにかく頭を空っぽにして楽しめることがここでの暮らしでは大切です」。
そこで非日常へゲストを誘う仕掛けを家のプランに盛り込みました。
Sさんが重視したのが、アクティビティとリラックスという2つの要素。
屋外の主役となるインフィニティプールは、しっかりと泳げることを考えてプランニングしました。全長26メートルで水深1.5メートル。飛び込むこともできます。
「景色としての水辺」の代表格はプール。健康志向を反映し、見た目だけでなく水深、大きさなどにこだわった実際に泳げるプランが増えている。また、プールサイドはアウトドアリビングの役割も兼ねている。キッチン側にはコンクリート製のテーブルが突き出し、水深も浅め。子どもたちが安全に水遊びでき、大人は水着のまま軽食や飲み物を楽しんだり、ひと泳ぎした後に寝そべったりできます。あらゆる年代の家族や友人が過ごせるのです。
「プールはもう1つのリビングといってもいいですね。音楽をかけて水中照明を灯し、深夜まで水辺で過ごすこともあります。夜も楽しめる大人のプールですよ」。
プールの内側は光沢のあるイタリア製のガラスモザイクタイル貼りで、プールを水中から輝かせます。
天気のいい日には自慢のジェットスキーで海原を駆け巡ることも。将来はクルージングや船釣りもしたいとクルーザーの購入も検討中です。
ジェットスキー置き場好天時にすぐに海に出られるよう、ジェットスキー置き場から浜に出る動線も確保している。一方でゆっくりとした時間を味わうリラックススペースも随所に設けています。これもSさん流のもてなし術。
リビングではイタリア製のソファにゆったりと体を沈め、まずはゲストに大窓からの景色を心ゆくまで楽しんでもらいます。
「伊良部島は冬でも寒さを感じませんから暖炉は作りませんでしたが、やはり炎があると人が自然に集まります」。
プールサイドやリビングでバイオエタノール暖炉を灯します。
バイオエタノール暖炉Sさんが「常夏の暖炉」と呼んで愛用。室内でも屋外でも手軽に炎を楽しめる。さらにプールサイドには、Sさんが発案したフライングベッドを設置。ブランコのような自然な揺れが心と体を癒やします。
屋外のジェットバスは全方向を眺めながら湯に浸かれる円形で、景色を見ながら冷えた体を温め、会話を楽しむそうです。
もちろんプライベートルームにも疲れた体を癒やすジェットバスを備えています。非日常にもオンとオフが大事。円熟した人生から導き出されたセオリーなのです。
ジェットバス遮るもののないフィックス窓で絶景を堪能できる、ジャクソン製バスのある主寝室浴室。夜は満天の星が楽しめる。最後に案内してくれたのが、構想を練っている最中という屋上のテラス。
「未完成ですがここで星空を眺めると最高です」と空を見上げます。日中の暑さを避けて、夜空の下のバーベキューテラスができないかと夢も広がるそうです。
つねにおもてなしの楽しみを求めて家を進化させています。
坂倉建築研究所/坂倉竹之助、北山 修、李野ル・コルビュジエの弟子であった坂倉準三の意志を継ぐ、創立80周年目の建築設計事務所。神奈川県立近代美術館が代表作。現在もモダニズムの精神を生かした“人間のための建築”を信条とし、都市開発から個人邸までを幅広く手がける日本トップクラスの建築家集団。