日本で初めての磁器として誕生し、400年を超える歴史を誇る「有田焼」。その産地である佐賀県有田町から、有田焼の美と歴史がぎゅっと詰まった贈り物が届きました。
有田焼のオブジェのようなクッキー
シンプルに洗練されたデザインのボックスを開けると、有田焼の色鮮やかで風雅な意匠が目に飛び込んできました。掌におさまるほどの小さなオブジェを思わせるこちら。実は、有田焼の絵柄を映したクッキーなのです。
ボックスに収められている5枚のクッキーは、すべて異なる絵柄。いずれの絵柄も、有田焼など九州各地の陶磁器の名品を収蔵する「佐賀県立九州陶磁文化館」などに収められた歴史的な作品から、絵柄を起こしています。
この5枚の絵柄を追うことで、有田焼の様式の変遷を知ることができます。
クッキーに異なる5つの様式の絵柄が映されている。左から、「初期色絵様式」、「鍋島様式」、「古伊万里金襴手様式」、「柿右衛門様式」、「初期伊万里様式」。5枚の絵柄から有田焼の技法を学べる
例えば、上の写真の一番右は「初期伊万里(いまり)様式」。
有田焼の歴史は、1616(元和2)年、朝鮮人陶工の李参平(り さんぺい)らが有田の泉山で陶石を発見したことにより、始まったとされています。当時は、その積み出しが伊万里の港で行われていたので、「伊万里焼」とも呼ばれました。
「初期伊万里様式」とは、有田焼が作られるようになった初期から1650年頃までに作られたもの。染付(そめつけ)のみの、素朴で柔らかい印象を与えます。1640年代から多色を使った色絵(いろえ)が始まり(写真上の一番左「初期色絵様式」)、「柿右衛門様式」(写真上の右から2番目)が確立。ヨーロッパに数多く輸出され、高い人気を得ました。
素朴な染付から華やかな色絵、金襴手へ
その後、江戸時代の元禄年間(1688~1704)には「金襴手(きんらんで)様式」が登場(写真上の左から3番目)。濃い染付に赤や金の絵の具を贅沢に使って、艶やかな花文様などを器面いっぱいに描き込んだこの様式は、豊かで華やかだった元禄の気風を反映しているとされます。
一方、鍋島藩窯では、藩の厳格な管理のもと、徳川将軍や諸大名家への献上品・贈答品として鍋島焼が製作されました(写真上の左から2番目が「鍋島様式」)。
このように、一口に有田焼といっても、実に多彩な様式と背景を持つことがわかります。
クッキーには、これら有田焼の歴史やストーリーを学べるしおり「Story Note」が同封されています。ご自分用として楽しむのはもちろん、うつわや工芸品のお好きな方へお贈りするのも素敵な一品です。
手前は「白磁彩菓 肥前皿絵文様菓 《有田様式》」5個入り2000円(税込み)。奥は、鍋島焼の様式を5つ集めた「肥前皿絵文様菓 《鍋島文様》」5個入り2000円(税込み)。有田焼の歴史を知るきっかけに
「歴史やストーリーを知ることで、名前だけ知っていたものの見え方が大きく変わることってありますよね。このクッキーが、有田焼に興味を持ってもらうきっかけになれば嬉しいです。有田にはたくさんの窯元があり、素敵なうつわにたくさん出合えます。いつかぜひ、有田にお越しください」とメッセージをくださったのは、クッキーを生み出した「天馬堂」の代表、深川裕子さん。有田で生まれ育ったのち、東京でブランディングやまちづくりの仕事に携わる中で他の地域に触れ、改めて有田の魅力に気づかされたそうです。
400年の歴史を支える進取の気風
有田では、毎年ゴールデンウィークに「有田陶器市」が開かれます。出店数450店以上、来場者120万人を超える人気の大イベントですが、今年は残念ながら無期延期。しかし、地元の人たちの熱意により、「Web有田陶器市」を開催、好評を博しました。伝統を大切に受け継ぎながらも、時代を映して新たな試みに挑む気風に、有田焼が400年以上の長い歴史を紡いできた理由が垣間見えるようです。
表示価格はすべて税込みです。 撮影/大見謝星斗(世界文化社)