人生を楽しむライフスタイルの拠点「豪邸拝見」 第4回(全10回) 人生で成功を収め、社会的な立場が上がっていくと、住まいは、「家族の器」としての本来の機能から拡大し、「社交の場」としての役割も求められるようになってきます。住まいという最も私的な場所にゲストを招くという行為は、それだけでもろ手をあげた最大限の友好の表明。それゆえにゲストとの親密度は一気に増します。心を開き、共通の友人を招いて、家族ぐるみのおつきあいをする──そのことで人生はよりいっそう潤いを増します。住まいを拠点に人生を貪欲に楽しむ人々を追いかけました。ここで養う英気が、次の幸運を引き寄せます。
前回の記事はこちら>> 【空間デザイナー・池貝知子流】
今どきの豪邸設計術
前回ご紹介したM邸の設計を手がけた池貝知子さんは、クオリティの高い富裕層の住まいを多数設計してきたことで知られています。彼女の審美眼を通したこれからの豪邸づくりのポイントとは?
スケール感と緻密なディテールで国内外から注目
自分の仕事は、家づくりを通してお客さまの人生と深くかかわることだと話す池貝知子さん。先のM邸でもわかるように彼女のデザインは大胆かつ緻密。プールやホームジムのあるウェルネスな空間を提案する一方、設備の使いやすさ、コストバランスなどにもこだわります。
「そういうものの積み重ねがストレスのない住まいをつくりますから」。
施主が望む未来を、長く快適な形で提案する、そこに国内外で支持される大きな要因があるのです。
池貝知子(いけがい・ともこ)東京都生まれ。日本女子大学家政学部住居学科を卒業し、松田平田坂本設計事務所(現 松田平田設計)を経て、2004年一級建築士事務所「アイケイジー」を設立。母校である日本女子大学家政学部住居学科の非常勤講師も務める。【プール】─ 現代の池 ─
水抜きは年に1度でよし。
プールは実用性のある癒やしの場
池貝さんが手がけたもう1つの都内の住宅。家族で楽しめるプールがあれば、リゾート感が増幅。水盤に映るものによって、異なる表情が楽しめるのも魅力。写真/ナカサアンドパートナーズ「昼は空を、夜は建物の光を映し出すプールは、現代の池のような存在です」と池貝さん。ろ過装置によって日常のメンテナンスは至って簡単。ウェルネスにも役立つプールは、もっと気軽に取り入れたい癒やしの水辺空間です。
【アート】─ 無用の用 ─
池貝プランの必須アイテム
菅木志雄のアートがシンプルな空間に色気や個性を表現。写真/ナカサアンドパートナーズアートは住み手の個性を表現する不可欠なものだと考える池貝さんは、家づくりと一緒にアートを提案するのが常。機能性を求められない分、アートは空間に豊かさをもたらすもの。「好みの服を選ぶように、生活の一部として楽しんでいただきたいですね」。
【AI】─ 先端技術 ─
使いやすく、劣化しないシステム構築がカギ
こだわりの音響機器のネットワーク化も可能(Mさん私物)。モバイル端末を利用した家電の操作や自動化など、AI技術の住宅への導入は、今、最も活発化している分野です。「今後の普及のキーワードは、“わかりやすさ”。誰もが簡単に使えて、時間を経ても劣化しないシステムづくりが重要です」。
【ジム】─ 健康第一 ─
健康維持のための施設は
ウェルネス志向の富裕層にとって必需
自宅できれいに健康になりたいというニーズは高い。写真/ナカサアンドパートナーズウェルネス志向の高まりとともに、ホームジムを希望するお客さまも少なくありません。「専属トレーナーを呼んでエクササイズができる本格的な空間や、浴室からつながる場所にマッサージベッドなどをしつらえたメンテナンスルームを作ることもあります」。
【セキュリティ】─ 外周の警備 ─
有人とAIの併用警備で暮らしを長く安全に
iPadに住宅設備をシステム化してコントロールすることも(Mさん私物)欧米に比べて日本のホームセキュリティは遅れていると話す池貝さん。「広い庭をもつ豪邸は建物内だけでなく、外まわりの警備も必要です。近い将来には、外出先からの遠隔操作や鍵に代わる顔認証システムなどもできるでしょう。積極的に取り入れるべきと考えます」。
【美容】─ 炭酸浴・サウナ ─
浴室を最高のデトックスタイムに
アンチエイジング効果も期待できるサウナは女性に人気。写真/ナカサアンドパートナーズ健康と並び、ニーズが高いのが美容。炭酸泉をはじめ、最近ではフィンランド式サウナやミストサウナも人気です。「自宅の浴室に人工炭酸泉を作る装置を設置する場合、工事を行えば見た目もすっきり。ボタン1つでジェットバスか炭酸泉か選べて便利です」。
最近では、コンパクトで設置場所を選ばない人工炭酸泉製造装置も。高濃度の炭酸泉を家庭で楽しみたい。写真/ナカサアンドパートナーズ 取材・文/冨部志保子 スタイリング協力/山田喜美子
『家庭画報』2020年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。