きものの文様 きものに施された美しい「文様」。そこからは、季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、古来の社会のしきたりを読み解くことができます。夏の文様を中心に、通年楽しめるものや格の高い文様まで、きもの好きなら一度は見たことのある文様のいわれやコーディネート例を、短期集中連載で毎日お届けします。記事一覧は
こちら 今日の文様01
鉄線(てっせん)
初夏に白や紫の花を咲かせるキンポウゲ科の落葉蔓草で、鉄線花ともいいます。しっかりとした蔓が印象的ですが、その堅い蔓がまるで鉄の針金を思わせるところから、この名がついたとされます。原産地の中国では、鉄線蓮(てっせんれん)と呼ばれ、鉄扇葛(てっせんかづら)、西洋菊などの別名もあります。
5月から6月の花の代表、鉄線は大ぶりの花を強調して表現される場合もあります。日本に渡来したのは、室町時代中期以降で、江戸時代には意匠や俳句などにしばしば登場しています。桃山時代の能装束や小袖にも、鉄線を唐草のように表現したものが残されています。
文様としては優美な花や葉、そして特徴的な蔓が図案化されています。友禅や紅型、浴衣など染めのきものに用いられるほか、刺繍や織でも表現されます。単独で用いる場合は初夏の季節感が出ますが、ほかの花と組み合わせれば季節を問わず使えます。
初夏のお出かけに生成り色の麻地に鉄線を刺繍した名古屋帯。鉄線の花、葉、蔓の特徴がよく表現されています。無地感覚のきものに合わせて。帯を主役にしたコーディネート。
【向く季節】夏
きものの文様
今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができます。きものを着る場合判断に迷う格と季節が表示され、こんな場所にお出かけできます、とのコーディネート例も紹介しています。見ているだけで楽しく役に立つ1冊。