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きものの文様【鶴(つる)】誰もが知る吉祥の象徴

2020.06.02

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きものの文様 きものに施された美しい「文様」。そこからは季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、古来の社会のしきたりを読み解くことができます。夏の文様を中心に、通年楽しめるものや格の高い文様まで、きもの好きなら一度は見たことのある文様のいわれやコーディネート例を、短期集中連載で毎日お届けします。前回の記事はこちら>>

今日の文様02
鶴(つる)


鶴や亀の文様がめでたいときに用いられることは、日本人なら誰もが知っていることではないでしょうか。鶴は中国では1000年生きるとされ、瑞鳥(ずいちょう)の1種として崇拝されてきました。

日本でも純白の羽を持つ鶴は、立ち姿、飛び姿ともに美しく、上流階級から一般庶民まで吉祥文様として使われました。


※吉祥文様とは、良い兆(きざ)しやめでたいしるしを意味する文様の総称。中国の影響を受けたものが多いが、日本で生まれたものもある。代表的な文様は、鶴や亀、松竹、四君子、宝尽くしなど。

飛鶴、雲鶴(うんかく)、群鶴(ぐんかく)、立鶴(たちづる)、鶴の丸など、鳥文様としてはもっとも多くの種類があります。

松喰鶴(まつくいづる)




花喰鳥(はなくいどり)文の一種で、鶴がの小枝をくわえたところを文様にしたものです。もともと花喰鳥は、鸚鵡(おうむ)などの異国の鳥で表現されましたが、平安時代になると松喰鶴に変わり、一般に用いられるようになります。正倉院(しょうそういん)文様のひとつです。

※正倉院は、奈良時代に建立された東大寺の大蔵(朝廷の倉庫)のことで、聖武(しょうむ)天皇ゆかりの品々が数多く残されている。正倉院文様とは、楽器や調度品など正倉院に納められている宝物を文様化したものをはじめとして、奈良時代に見られる西域や中国の影響を受けた文様を総称する。

向い鶴菱(むかいつるびし)




翼を広げた鶴を菱形に図案化した文様で、単に鶴菱ともいいます。文様の形は、2羽の鶴を向かい合わせて上下、または左右に組み合わせ、外側が菱形になるように構成します。そのほか、1羽の鶴を菱形にまとめたものも見られます。菱文が有職(ゆうそく)文様のひとつでもあることから、吉祥の鶴と合わせることで、文様の格式が上がるともいわれます。

※有職文様とは、平安時代からの公家階級の装束、調度品、牛車(ぎっしゃ)などの装飾に用いられた伝統的な文様の総称。

向い鶴丸(むかいつるまる)




翼を広げた2羽の鶴が向かい合う様子を円形にまとめたものです。基本は鶴は左右で向かい合いますが、上下で向かい合ったり、松をくわえたりなどの変形も見られます。円形のほか、楕円形もあります。有職文様のひとつですが、小紋などの柄にも用いられています。家紋としては、南部家や蒲生家のものが知られています。

折鶴(おりづる)




折紙の鶴を文様化したものです。文様として用いられるようになったのは、折紙で鶴が折られるようになった江戸時代といわれ、当時の小袖の文様にも見られます。また、折鶴や千羽鶴を病気快癒(かいゆ)や長寿の祝いに贈る習慣は、「鶴は千年、亀は万年」の言い伝えによるものでしょう。現在も小紋などに使われます。

鶴亀(つるかめ)



鶸色(ひわいろ)に鶴亀文様を愛らしく織り出した袋帯。紗綾形(さやがた)の紋綸子(もんりんず)の訪問着と合わせて初釜など、新春のおでかけに。

延命長寿の象徴とされる鶴と亀を組み合わせた吉祥文様です。蓬莱(ほうらい)思想に基づいて平安時代から衣装や工芸品に用いられ、江戸時代には縁起がよいことから婚礼の夜具などにも使われました。現在は鶴亀と松竹梅を組み合わせた留袖などが見られます。

【向く季節】
通年、正月・新春


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きものの文様

今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができます。きものを着る場合判断に迷う格と季節が表示され、こんな場所にお出かけできます、とのコーディネート例も紹介しています。見ているだけで楽しく役に立つ1冊。
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