きものの文様 きものに施された美しい「文様」。そこからは、季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、古来の社会のしきたりを読み解くことができます。夏の文様を中心に、通年楽しめるものや格の高い文様まで、きもの好きなら一度は見たことのある文様のいわれやコーディネート例を、短期集中連載で毎日お届けします。
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紫陽花(あじさい)
紫陽花は古くからあり、『万葉集』にも見られます。
「紫陽花の八重(やえ)咲く如くやつ代(よ)にをいませ我が背子(せこ)見つつしのばむ」の歌は、幾重(いくえ)にも咲く紫陽花の花のように、愛しい人が末永く繁栄することを願ったもの。
文様としての紫陽花も、五月雨(さみだれ)に濡れて一層美しく輝いている様子を表現したものが主流です。
文様として紫陽花が多く使われるようになったのは江戸時代以降です。琳派の作家たちによって工芸品などに、大輪の青紫色の花が巧みに文様化されました。
紫陽花は梅雨から盛夏にかけて咲く花なので、紫陽花を単独で用いたものは夏のモチーフになります。かつては能装束などにも使われましたが、現代は趣味のきものや帯、浴衣に見られます。
【向く季節】
夏
きものの文様
今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができます。きものを着る場合判断に迷う格と季節が表示され、こんな場所にお出かけできます、とのコーディネート例も紹介しています。見ているだけで楽しく役に立つ1冊。