きものの文様 きものに施された美しい「文様」。そこからは、季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、古来の社会のしきたりを読み解くことができます。夏の文様を中心に、通年楽しめるものや格の高い文様まで、きもの好きなら一度は見たことのある文様のいわれやコーディネート例を、短期集中連載で毎日お届けします。
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瓜(うり)
6つの瓢箪「むひょう」を「無病」の語呂合わせにして、無病息災を願った文様。南瓜(かぼちゃ)、糸瓜(へちま)、胡瓜(きゅうり)、瓢箪(ひょうたん)、西瓜(すいか)、冬瓜(とうがん)、夕顔(ゆうがお)などのウリ科の植物を文様化したものを、一般的に瓜文といいます。
これらの植物は形のおもしろさから図案化されやすく、葉や蔓(つる)とともに、さまざまに表現されてきました。能装束や小袖にも用いられ、江戸時代の狂言装束に、夕顔と片輪車を大胆に染め出したものが見られます。
瓜文(うりもん)
食事会に
通常は組み合わせることのない瓜と貝を並べて、「うりかい」と読ませる文様は、商売を大切にする商家の心意気が伝わってきます。こうした遊び心のある文様にも、ユニークな瓜の形が生きています。縁起ものなので、新年の集まりなどにも。ウリ科の野菜(マクワウリ)をモチーフにして図案化した瓜文は、江戸の庶民にも好まれ、浴衣や手ぬぐいの文様としても使われました。現代は浴衣のほか、きものや帯の意匠に取り入れられています。
瓢箪(ひょうたん)
瓢箪はウリ科の蔓性一年草で、夕顔の変種です。果実が成熟したものは、果皮が堅くなるので、徳利(とっくり)などの容器や装飾品に利用されます。実の中央がくびれた形のおもしろさから、蔓や葉とともに文様化されました。
写真のように、竹垣にからんで蔓を伸ばす瓢箪は、実の中の種などを取って乾かしたものと区別するために、生(な)り瓢(ひさご)とも呼ばれます。
写真の右は長襦袢の生地に瓢箪文を散らしたもので、形のユニークな実だけを用いたものです。中身をくりぬいて乾燥させた実は、「ふくべ」や「ひさご」ともいいます。また、小形で多数の実をつける千生(せんな)り瓢箪は、豊臣秀吉の馬印として有名です。
【向く季節】
夏、秋、通年
きものの文様
今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができます。きものを着る場合判断に迷う格と季節が表示され、こんな場所にお出かけできます、とのコーディネート例も紹介しています。見ているだけで楽しく役に立つ1冊。