きものの文様 きものに施された美しい「文様」。そこからは、季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、古来の社会のしきたりを読み解くことができます。夏の文様を中心に、通年楽しめるものや格の高い文様まで、きもの好きなら一度は見たことのある文様のいわれやコーディネート例を、短期集中連載で毎日お届けします。
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沢瀉(おもだか)
沢瀉は水田や池、沼などに自生する多年草です。夏から秋にかけて、3弁の白い花を咲かせます。葉脈が高く浮き出ているために、「面高(おもだか)」と名づけられました。
文様化されたのは平安時代頃で、矢じりの形をした葉や可憐な花が図案化されて描かれます。鎌倉時代には武家にも好まれ、鎧などの武具にも施されました。矢じりに似た葉が槍のようにも見えることから、通称「勝ち草」として縁起をかついだようです。さらに、江戸時代には多くの大名や旗本の家紋とされました。
湿地帯に自生することから、沢瀉単独よりも、流水との組み合わせが多く見られます。独特の細長い葉にラインを入れて葉脈を強調し、図案によっては藤や桐の花に似た小花がともに配されているものもあります。現在は主に夏用のきものや帯に用いられます。
食事会に
翠紗(すいしゃ)の生地に、沢瀉の葉と花を流れるように配した京友禅のきもの。織りの味わいが楽しめる無地の九寸名古屋帯を合わせてすっきりと。※翠紗(すいしゃ)とは、盛夏向きの紗織りのこと。生地を織る経(たて)糸に節のある玉糸が使用されているため、さらりとした触感がある。【向く季節】
夏
きものの文様
今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができます。きものを着る場合判断に迷う格と季節が表示され、こんな場所にお出かけできます、とのコーディネート例も紹介しています。見ているだけで楽しく役に立つ1冊。