彩の国さいたま芸術劇場での10作目の上演作品となった『LOVE ME TenDER』(2016年)より。舞台の奥行きや装置を駆使したダイナミックな演出も毎回見どころになっている。©HARU熱く胸に響くダンスを軸に、生演奏、人形劇、映像、コントなどをちりばめた遊び心満載のステージで、老若男女を魅了する異色ダンスカンパニー、コンドルズ。学ラン姿がトレードマークの彼らが、このステイホーム状況下で作った特別映像、コンドルズ埼玉新作ビデオダンス2020『I Want To Hold Your Hand』が、5月30日から6月8日まで、オンラインで無料配信されます。
『Like a Virgin』(2019年/彩の国さいたま芸術劇場)での人形劇の1シーン。近藤家に持ち寄られた人形や置き物を使い、ちょっとシュールな物語を独特のゆるさで展開する人形劇は、いまや公演の定番演目。©HARU配信を企画したのは、2006年から“コンドルズ埼玉新作シリーズ”を上演し、今年も5月30日・31日に彼らの新作『Golden Slumbers-ゴールデン・スランバー』公演を予定していた彩の国さいたま芸術劇場。昨今の状況により、公演が中止になったことは残念ですが、あえて初日の開演時間に合わせて配信を開始するところにも、劇場としての気概を感じます。
『Like a Virgin』(2019年/彩の国さいたま芸術劇場)より。近藤さんの歌とギターにのせ、限られた素材を別のものに見立てる趣向。映像や影絵など、ほかにもスクリーンを使ったネタはいろいろある。©HARUもちろんそれは、公演を楽しみにしていた観客のために、“新作ビデオダンス”なるものを作成したコンドルズにも言えること。中止になった公演と呼応させるように、タイトルをビートルズの曲名から取って『I Want To Hold Your Hand』にしたところも洒落ています。
コンドルズ主宰の近藤良平さん。日本で生まれ、父の仕事の関係で南米で育つ。楽器演奏や撮影にも長けたマルチな表現者。複数の大学で非常勤講師も務める。2016年度芸術選奨文部科学大臣賞を受賞、2018年には横浜文化賞を受賞。©HARUちなみに、海外ツアーも行っている男ばかりのこのグループを率いるのは、大学時代にダンスを始め、1996年にコンドルズを旗揚げした主宰の近藤良平さん。全作品の構成・演出・振付を手がけるほか、NHK連続テレビ小説『てっぱん』のオープニングの振付など、ダンサー・振付家・役者として幅広く活躍しています。
また、現在19人いるメンバーも、NHK教育テレビ『みいつけた!』のオフロスキー役で知られる小林顕作さんなど、それぞれに多才でバラエティ豊か。そんなところも、他に類を見ない圧倒的な存在感のゆえん。幅広い層から愛されているコンドルズの魅力です。
『アポロ』(2013年/彩の国さいたま芸術劇場)より。トレードマークの学ラン姿で繰り広げるエネルギッシュな群舞は感涙モノ。近藤良平さんのソロダンスとともに観る者を虜にする。©HARUユニークかつ斬新なアプローチで、きっと今回のオンライン配信でも、観る者に元気を届け、笑顔を運んでくれるはず。百聞は一見に如(し)かず。ポジティブでユーモア溢れる、メンバーの熱いメッセージが詰まったコンドルズの特別映像を、この機会にぜひ味わってみてください。
構成・文/岡﨑 香