きものの文様 きものに施された美しい「文様」。そこからは、季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、古来の社会のしきたりを読み解くことができます。夏の文様を中心に、通年楽しめるものや格の高い文様まで、きもの好きなら一度は見たことのある文様のいわれやコーディネート例を、短期集中連載で毎日お届けします。
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龍(りゅう)
鱗(うろこ)文様の地に、正方形に龍を表現した角龍(かくりゅう)文の袋帯。吉祥文様の帯として礼装用のきものに最適。龍は鳳凰(ほうおう)とともに、古代中国で作り出された想像上の動物で、天に昇って雨を降らすと信じられました。その姿は、数種の実在の動物を組み合わせて作られており、角は
鹿、頭は駱駝(らくだ)、爪は鷹(たか)をモチーフにしたとされています。
中国では古くから、鳳凰、麒麟(きりん)、亀、龍を四瑞(しずい)といって、めでたいときに現れる生き物とされ崇められてきました。
さらに、4つの方角を守る神、四神(しじん)のひとつで、龍は青龍として東の方角を守ります。写実的な龍の文様が日本に伝わったのは飛鳥時代と考えられています。
龍文(りゅうもん)
中国では時代とともに、龍の姿は変化しています。蛇(へび)のような形から鱗(うろこ)や長い尾、翼などが加えられてきましたが、日本では長い角と髭(ひげ)を持ち、体が鱗で覆われた姿が一般的です。
吉祥文様のひとつとして工芸品や染織品に広く使われました。向かい合う2匹の龍は双龍(そうりょう)、龍の尾と頭をつなげて小さく円形にしたものは丸龍、龍を方形で表したものは角龍と呼ばれ、瑞雲と組み合わせた雲龍なども見られます。(「雲」の文様の記事は
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【向く季節】
通年
きものの文様
今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができます。きものを着る場合判断に迷う格と季節が表示され、こんな場所にお出かけできます、とのコーディネート例も紹介しています。見ているだけで楽しく役に立つ1冊。