きものの文様 きものに施された美しい「文様」。そこからは、季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、古来の社会のしきたりを読み解くことができます。夏の文様を中心に、通年楽しめるものや格の高い文様まで、きもの好きなら一度は見たことのある文様のいわれやコーディネート例を、短期集中連載で毎日お届けします。
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麻の葉(あさのは)
夏の気軽なパーティに
変わり織りの生地に麻の葉文様をアレンジして絞り染めした小紋。大きな麻の葉はところどころ線が途切れていますが、それが柔らかさを出しています。金魚の帯を合わせて夏のお出かけに。正六角形を基本とする割付(わりつけ)文様の一種です。(割付文様の記事は
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6個の三角形を組み合わせ、それを四方に繋ぎ合わせたもので、形が大麻の葉に似ていることから、この名がつけられたといわれます。文様そのものは古くからあり、平安時代の仏像にも截金(きりかね)技法による装飾が見られます。
※截金(きりかね)とは、金箔や銀箔を糸のように細く直線状に切ったものを、膠(にかわ)などで貼りつけて文様を表現する技法のこと。江戸後期に歌舞伎役者の嵐璃寛(あらしりかん)が、舞台『妹背門松(いもせのかどまつ)』の中で娘役を演じた際、この文様を用いたことから、当時の女性たちの間で大流行となりました。娘の名前がお染だったことから、麻の葉文様が「お染形(そめがた)」と呼ばれて親しまれました。
麻の葉文(あさのはもん)
麻の葉を前後左右に繋いだものは、麻の葉繋ぎとも呼ばれます。江戸の女性にはやった麻の葉文様は、やがて子どもの産着や下着に用いられるようになります。
麻が丈夫でまっすぐ育つことにあやかったもので、かつてはどの家庭でも、子どもが生まれると、女の子には赤、男の子には黄色か浅葱(あさぎ)色のきものを着せました。この習慣はなくなりましたが、きものや帯、長襦袢などには欠かせない伝統文様のひとつです。
破れ麻の葉(やぶれあさのは)
麻の葉文様は基本をアレンジしたものが多く、破れ麻の葉はその代表。部分的に麻の葉の連続模様が途切れているのが特徴です。
【向く季節】
通年、夏
きものの文様
今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができます。きものを着る場合判断に迷う格と季節が表示され、こんな場所にお出かけできます、とのコーディネート例も紹介しています。見ているだけで楽しく役に立つ1冊。