きものの文様 きものに施された美しい「文様」。そこからは、季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、古来の社会のしきたりを読み解くことができます。夏の文様を中心に、通年楽しめるものや格の高い文様まで、きもの好きなら一度は見たことのある文様のいわれやコーディネート例を、短期集中連載で毎日お届けします。
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朝顔(あさがお)
ヒルガオ科の一年草。平安時代に中国から伝えられた朝顔は、もともとは薬用としてその種を下痢に用いたとされています。江戸時代になると、観賞用として盛んに作られるようになり、櫛(くし)や手ぬぐい、団扇(うちわ)、きものなどの文様としても登場します。
絽(ろ)の生地に染め疋田(ひった)で朝顔の花を表し、葉と蔓を手書きした帯。朝顔の開花期は7月~10月ですが、きものでは7、8月の花として用いられます。※染め疋田とは、絞りの模様を染めで表現する技法。朝咲いてすぐにしぼんでしまう朝顔は、一朝一期の花だから美しいととるか、はかなさや無常を感じて忌避するかの違いですが、人によってとらえ方が異なります。
朝顔の文様は、何といってもラッパ状の花が開花したところと、単純な葉の形、細く長い蔓(つる)が印象的です。季節感がはっきりしているので、主に浴衣の柄に使われますが、夏のきものや帯にも見られます。ほかのモチーフと組み合わせるより、単独で文様化されることが多いようです。
買い物に
朝顔の花と葉を印象的に描いた染め名古屋帯。うっとうしい梅雨時に締めたいさわやかな意匠です。【向く季節】
夏
きものの文様
今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができます。きものを着る場合判断に迷う格と季節が表示され、こんな場所にお出かけできます、とのコーディネート例も紹介しています。見ているだけで楽しく役に立つ1冊。