――圧巻のダンスシーンを含めて、明るく魅力的なドン役がまさにハマリ役のアダムさん。ドンと共通点を感じているところはありますか?
「似ているところは確実にあると思います。まず、自信がない慣れない分野へと進んでいくところ。僕はダンスの世界から、歌と台詞が伴うミュージカルの世界に入りましたし、ドンはサイレント映画からトーキーへというように、新しいフィールドに挑戦しています。性格的にも、周囲との関係を温厚に保っているところは似ているかもしれません。ただドンは、リナには非常につれないので、そこはちょっと違うかな(笑)。演じる側としては、なるべくチャーミングで温かな人柄にしたいと思ってはいるんですが(笑)」
――スター女優のリナは、わがままで思い込みが激しいですからね。本作品の初演は2012年のロンドンのパレス・シアター。どんな気持ちで挑まれたのでしょう?
「僕が初めてミュージカルに出演したのは2001年。なので、そこそこ経験はあったんですが、名門劇場でのロングラン公演だけに、気合は入っていましたね。実は2012年より以前にも、映画『雨に唄えば』をもとにした別の形態の作品に関わったことがあるんです。あれは2004年かな。そのときはドンとして出演する以外に振付も担当したので、役作りにフルに集中できなかったことが悔やまれるところでした。その点、このプロダクションでは、最初からドンという役にしっかり集中できてよかったなと思います」
ファンの歓声に応えるドンとリナ。世間は2人を大スター同士のカップルともてはやしていたが、ドンはわがままなリナに実はうんざりしていて……。日本公演より。撮影/阿部章仁