――2004年にドン役と出合ったときから、長い付き合いになりそうな予感はあったのですか?
「いえ、それはなかったです。2004年の作品は、チチェスター・フェスティバル劇場(イングランド南東部にある)での2か月限定の公演でしたし、この作品にしても、まさかこんなに大成功するとは思ってもみなくて。なので、再演以降の公演は、僕にとってはかなり嬉しい“おまけ”のような感じ(笑)。今もこの役を演じられるなんて、とても恵まれているなと思いますし、僕自身楽しい思いをさせていただいています」
――いまや当たり役の一つです。
「ありがたいことです。やはりオリジナルキャストとして参加したマシュー・ボーンの『スワン・レイク』でのザ・スワン役も、9年くらいやらせてもらったおかげで、より幅広いお客さまに観ていただくことができましたし、その次がこの『SINGIN' IN THE RAIN ~雨に唄えば~』のドン・ロックウッド役。役に恵まれる機会がなかなか巡ってこないこともあるなか、2つの大きな作品を通してたくさんの方とつながりを持てたことは、とても幸せなことだなと感じています」
――今回の公演にあたって、楽しみなことと課題は何ですか?
「楽しみなことは、もう一度ドンという人物を見直し、作っていく作業。新しいキャストが持ってきてくれるエネルギーやアイディアもあると思いますし、またみんなで新しく作っていけることが楽しみです。課題はやっぱり、いかにスタミナを蓄えるかですね。ダンスも歌もしっかり準備しておかないと、とても務まらない作品なので。ベストな状態で公演に臨めるように、毎回、数か月かけて自分の声や体の状態を作り上げるようにしています」
――毎回びしょ濡れになりますしね。やはり、14tもの水を使った土砂降りの雨の中で『雨に唄えば』を歌い踊るのは大変ですか?
「かなり体力を使うことは確かです。しかもあのシーンは、劇場でしか練習できない。今はだいぶ慣れましたが、本番で派手に滑って転んだことも一度や二度じゃありません(笑)。とはいえ、なかなか味わえないユニークな体験ですし、僕がいちばん気に入っているのも、やっぱりこのシーンなんです。ドンの喜びと幸せな感情が溢れ出る第1幕のクライマックスで、お客さまも僕がびしょ濡れになるのを観て楽しんだり、客席に水しぶきが飛んでくるのを楽しんだり……。お客さまと一緒に遊んでいるような感覚もあって、とても一体感を感じます」
日本公演より、不朽の名ナンバー『雨に唄えば』を歌い踊るアダムさん。華麗なステップで飛び散る水しぶきが、客席をさらに盛り上げる。撮影/阿部章仁