歴史とともにある美しい日常 ベルギーの城に暮らす 最終回(全3回) 貴族の住まいとして現役で使用されている城から、公共施設として市民に愛される城まで。九州とほぼ同じ広さの国土に大小合わせて約3000もの城が現存するというベルギーでは、歴史を宿し、贅が尽くされた美しい城が人々の日常に溶け込んでいます。さまざまなかたちで親しまれている5つの城を訪ねました。
前回の記事はこちら>> ※以下の記事は、『家庭画報』2020年6月号取材当時の情報です。開場状況等は変更となっている場合もありますので、最新情報は公式ホームページ等でお確かめください。 30万本のバラが咲き誇る
ヨーロッパ最大級のバラ園
コロマ ローズガーデン
1515年に築かれ、1984年に地元自治体が購入し修復したコロマ城。建物はバラの資料館として開放されている。1515年に築城されたコロマ城を1984年にシント・ピータース・レーウの自治体が購入、修復し、その後、フランダース政府林野庁の管理のもと、2000年にローズガーデンとしてオープン。現在は3000種を超えるバラが集められ、特にベルギーのバラ育苗家ルイ・レンズが作出した品種が数多く育てられています。
広大な庭園は、フランドル地方のバラ、赤と白のバラ、オールドローズ、インターナショナルなどのテーマで区分けされ、それぞれ異なる見せ方で、楽しく散策することができます。
満開の「ポンポン ブラン パルフェ」の前にベンチが置かれた人気のスポットで記念撮影する来訪者たち。マルセル・フォッセン氏。『心配無用のバラ101本』という自著を片手に。ローズガーデンの開設と充実に尽力したのが、政府林野庁に40年あまり勤務し、現在もアドバイザーとして活躍するマルセル・フォッセン氏。近隣の城や公園も監修しています。その功績を称え、園内には、彼の名前を冠したバラのトンネルがあります。
右から、ルイ・レンズ「マリア・テレサ」、グレゴリ「アプリコットシルク」、ルイ・レンズ「シューベルト」左上・タンタウ「アシュラム」、右上・ルイ・レンズ「ヴュー」、左下・ビバ「ピーター・ポール・ルーベンス」、右下・パトリック・ディクソン「メメント」。1994年に野菜畑にバラが植えられ始め、現在では3000種以上、30万本を超えるバラが育てられている。コロマ ローズガーデン
J.Depawstraat25-1600 Sint-Pieters-Leeuw
TEL:+32 2 454 86 30
開場時間:日の出から日没まで
月曜定休 入場無料
中世の農業を再現した庭園が見どころ
ガースベーク城
1240年に建てられたガースベーク城。“悲劇のエグモント伯”をはじめ、数多くの貴族に所有された。周囲にはフランダース地方の原風景が残り、16世紀にブリューゲルが描いた《穀物の収穫》を彷彿させる。コロマ ローズガーデンに隣接するガースベーク城も、フォッセン氏の監修による庭園が見どころ。中世の農業を再現した、いわば農業博物館のような庭があります。
たとえばりんごなどの果樹を棒付きキャンディのように枝を薄く成形し、場所を節約して収穫しやすいように育てるなど、中世ならではの工夫を見てとることができます。
城の建物はアートイベントなどに利用されています。
枝を渦巻きのように平らに成形したりんごの木。