お清めの塗香をバッグに忍ばせて
【西村呉服店/店長・後藤 紅さんのお出かけ必需品】
「西村呉服店」の店長、後藤 紅さんが常にお持ちになっているのは、「香り」。
後藤紅さん(以下、敬称略)「お寺の奥様に教えていただいたことがきっかけで、塗香を持ち歩くようになりました。本来は、お寺で住職の方々がお勤め前に、身を清める際に使うもので、奥様はお出かけの際にも持ち歩かれていると伺ったんです。それ以来、私もバッグにしのばせて、気持ちを鎮めたいときや、気分転換をしたいときに使っています」
御本尊にお供えをしたり、修行僧が邪気を払うために用いられる塗香。微量を手に取り、手や首筋などに塗布。しばらくすると、体温によってほのかな香りが漂い始めます/松栄堂後藤さんは、印象深く香りが残る西洋のパフュームとは異なった、日本古来の香りを楽しんでいらっしゃいました。日本では身を清めるものとして、古くから使われてきた塗香。確かに、お寺などで懐かしく優しい香りに出会うと、とても穏やかな気持ちになります。
後藤「それから、初心者さんは外出先できものを汚してしまうことがあるかと思います。基本的にはなるべく触らず、プロにお任せしていただきたいのですが、目立つ部分についてしまったけれどすぐに脱げない時や、洗えるきものの場合は携帯用シミ抜きを持ち歩くと応急処置ができますよ」
バッグに入れてもかさばらないコンパクトサイズの携帯用シミ抜きはドラッグストアなどで手に入ります。応急処置として持っていると安心。後藤「その場合、こすらないことが大事。そして帰宅後はなるべく早く専門店や悉皆屋さんなどに染み抜きをお願いしてくださいね。他には、お手洗いや雨のときなどタスキをすると動きやすいので、腰紐を持って出かけると便利かと思います」
先日、コーヒーをポタリときものにつけてしまったことがありました。あの日、携帯用シミ抜きを持っていたら解決できたかもしれません。
●達人の雨じたく 05●
荷物を減らす工夫も、雨じたくのひとつです
後藤さんの雨の日の足元はこちら。写真左・草履の鼻緒に挟んで使用する草履カバー「美人のつま先」。右・ゴム底と足裏部分がコルク製の「祇園 ない藤」オリジナルのJOJOシリーズに、雨よけのカバーをつけた細雪草履/西村呉服店雨の日は菱屋さんのカレンブロッソに、ビニール製の草履カバーをつけるか、「祇園 ない藤」さんが手掛けている「JOJO」シリーズの細雪草履を履いています。
また、雨ゴートを持つか悩むほどの日は、薄くて大きめの風呂敷か、薄手のショールを代用します。雨の日はどうしても荷物が増えてしまうので、なるべくコンパクトにする工夫も大切ですよ。
西村呉服店宮城県仙台市青葉区中央2-6-11
電話:022-261-5291
URL:
http://kimono-nishimura.jp
備えあれば憂いなく、慌てず優雅にお出かけは楽しめる!
いかがでしたでしょうか。達人の皆さんの必需品は、万が一に備える気持ちと、大切なきものや荷物を守ることに心を配った持ち物が多かったように思います。
そしてハンカチ、手拭い、風呂敷は、ほとんどの皆さんが1枚ではなく複数お持ちで、さまざまな用途で使いこなしていることを知り、改めて四角い布の持つ魅力に触れることができました。
私も皆さんのように、きものだけではなく小物にも季節や、着ていく場所、お会いする方に想いを寄せられるよう、これからも日々精進したいと思います。
達人の皆さんにはお忙しい中、アンケートやお写真の提供などたくさんのご協力をいただきました。この場をお借りして、改めて御礼申し上げます。 本当にありがとうございました。
表示価格はすべて税別です。 構成・文/笹本絵里 ※この連載で取り上げて欲しい、皆さんの「いまさら聞けない」きものの基本&疑問をぜひ お聞かせください! 件名「イチから始めるきもの道」と明記し、メールにてお寄せください。 E-mail:k-salon@sekaibunka.co.jp