左から森山未來さん(俳優・ダンサー)、片桐はいりさん(俳優)、栗原 類さん(俳優・モデル)。現代演劇の旗手として国際的に活躍する作家・演出家・チェルフィッチュ主宰の岡田利規さん。KAAT神奈川芸術劇場で6月3日から上演される予定だった、その新作舞台『未練の幽霊と怪物』の一部が、演奏付きのリーディング形式で2日間だけ特別にオンライン上演されます。
出演者は、森山未來さん、片桐はいりさん、栗原 類さん、石橋静河さん、太田信吾さん、七尾旅人さんの6人。コロナ禍による上演中止が発表された4月15日以降後も、来るべき未来の上演に向けて、それぞれのリモート環境下でワークショップやリハーサルを行ってきたといいます。
作品は、社会とその歴史の犠牲者として生み出された未練の幽霊と怪物を題材に、能の様式を用いて現代日本の姿を鋭く描き出すという、いわば岡田版夢幻能。コンペで新国立競技場の設計者に選ばれながら後に白紙撤回され、程なく他界した天才的建築家ザハ・ハディドさんをシテとする『挫波(ザハ)』と、巨額の資金が投じられたにもかかわらず、1度も正式稼働することなく廃炉への道を辿る高速増殖炉もんじゅをめぐる『敦賀(もんじゅ)』の2演目から成っています。
左から石橋静河さん(俳優・ダンサー)、太田信吾さん(映画監督・俳優・映像ディレクター)、七尾旅人さん(シンガー・ソングライター)。今回リーディング形式で上演されるのは、各演目の一部とのことですが、なにせこの着眼点の面白さ。岡田さんがドイツ公立劇場の名門、ミュンヘン・カンマーシュピーレから委嘱されて2017 年に発表し、高い評価を得た『NŌ THEATER』の日本版進化形ともいえる作品だけに、期待は高まります。
また、『NŌ THEATER』も手がけた音楽監督・演奏の内橋和久さんが能でいうところの囃子方(はやしかた)を、シンガーソングライターの七尾さんが謡(うたい)を担当。国内外でダンサーとしても活躍する森山さんをはじめ、キャストも身体性と個性が光る面々だけに、単なるリーディング公演では終わりそうにありません。
岡田さん曰く、「上演の予定がなくなった演劇は、幽霊になるのでしょうか? あなたのオンライン環境に、『未練の幽霊と怪物』の上演の幽霊を出没させてみたいと思っています」。実際このコロナ禍で、無念のうちに上演中止を決めることになった公演のなんと多いことか。せめて『未練の幽霊と怪物』に新たな公演機会が訪れることを祈りつつ、2日間だけの特別オンライン上演を楽しみたいものです。
Informathion
『「未練の幽霊と怪物」の上演の幽霊』
上演(配信)日時/6月27日・28 日 16時~ 配信場所/KAAT神奈川芸術劇場YouTubeチャンネル(
https://www.kaat.jp/d/mirenonline) 視聴料/無料 ※上演時間より上記サイト内のYouTubeで視聴可能。両日とも同一の内容をリアルタイムでのみ配信し、アーカイブ配信はしない。
作・演出/岡田利規 音楽監督・演奏/内橋和久 出演/森山未來、片桐はいり、栗原 類、石橋静河、太田信吾、七尾旅人(謡手)
演目/『挫波(ザハ)』『敦賀(もんじゅ)』の一部 ※上演後に岡田利規と白井 晃(演出家・俳優/KAAT神奈川芸術劇場芸術監督)によるアフタートークあり。
詳細はこちら(
https://www.kaat.jp/d/mirenonline )