第30回
粋な浴衣姿を今年こそ! 2020年夏から始める“おうち浴衣”
「竺仙」の新作から大人の女性におすすめの浴衣をピックアップ。左から、夏きものとして楽しむ綿紅梅7万5000円、縦のラインが強調され、凛とした佇まいが美しい菖蒲柄の綿コーマ3万2000円、紫陽花柄の奥州小紋6万7000円(すべて反物のみ)/竺仙ステイホーム期間を経て外に出てみれば、暑さを感じる日も増えていました。まもなく梅雨明け、夏本番。今年も思う存分浴衣を楽しみたいですね。そこで今回は、浴衣の老舗「竺仙(ちくせん)」さんで新しい生活様式下での浴衣の楽しみ方をうかがってまいりました。
「竺仙」さん、新しい生活様式で楽しむ浴衣スタイルを教えてください
お話をしてくださったのは、「竺仙」の五代目・小川文男社長。早速ですが、全国各地で花火大会やお祭りが中止になってしまいました。いつもならイベントで着ていた浴衣、今年はどこで楽しめばよいでのしょう。
小川文男社長(以下、敬称略)「最近は、ご友人とのランチや夜のお出かけで浴衣を着る女性がとても増えていて、私どもにはレストランでも着られるようなこだわりのある浴衣を選びにいらっしゃる方も多いのですよ。昨年は綿紅梅(めんこうばい)や
絹紅梅(きぬこうばい)の浴衣が人気でした。浴衣でお出かけをする機会を、お客さまご自身で作っているように感じました」
紅梅とは、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)に地糸よりも太い糸を格子状に織り込み、立体感のある凹凸を表現した生地のこと。この表面の凹凸の勾配に「紅梅」の当て字が付けられたそうです。木綿地の綿紅梅と、浴衣地では最も格の高い絹紅梅があり、絹紅梅は浴衣というよりも襦袢や八寸の名古屋帯と合わせ、夏きものとしての装いを楽しみます。左・紅梅小紋「乱菊」6万7000円、右・絹紅梅「牡丹唐草10万5000円(反物)/竺仙小川「高級な浴衣が人気なのは、きもの感覚でおしゃれをしたいという方が増えたからでしょうね。きものほど厳密なルールはなく、むしろ自由に着られるのが浴衣の面白さ。浴衣の格などはあまり気にしなくてよいと思っています」
ファッションとして浴衣を楽しむなら、なんでもあり!?
小川「例えばスニーカーで浴衣を着ても構わないと思います。ご自身が好きなように楽しむ、それがファッションですからね」
取材当日、「竺仙」の店内には、新作浴衣がずらり勢揃い。小川「ただし、その浴衣をお召しになったご自身が、出かける場所に馴染めるかはよくお考えになってください。例えば美術館に行くからといって、何も展示品のような高級浴衣を着ていく必要はありませんが、分別ある大人の女性が、夏祭りと同じように、裾を短めにして下駄を履いた姿で本当によいのでしょうか」
Tシャツと短パンにスニーカー姿で美術館へ行くことには、少し抵抗を感じます。大人の女性としての着こなしを考えることは、浴衣やきものに限ったことではありませんね。
小川「私は浴衣の種類より、着方が大事だと思います。
それと浴衣の魅力は“涼しさ”。最近の女性は裄も裾も長めがお好みですが、涼しく着るには、短めの方が涼しいし、活動的で粋な印象になるかと思います」
丈の短い着こなしは、若い女性にしか似合わないと思い、きものと同じように着ていました。手や足のくるぶしをのぞかせて着ることは、涼しい上に粋にも見えるのですね!
小川「浴衣はきもののように着ることもできます。ただ、そのまま肌に着ると、とても涼しい衣類ですから、本来のよさも実感して欲しいんです。それで今年は皆さんに、“おうち浴衣”をすすめたいと思っています」
“おうち浴衣”、ですか!?