浴衣の老舗「竺仙」がすすめる“おうち浴衣”とは
浴衣の生地で最もポピュラーなコーマ地は、お手入れもしやすく“おうち浴衣”にもおすすめ。色や柄によって雰囲気が随分と変わります。コーマ白地「菖蒲」3万2000円(反物)/竺仙小川「夕方の風呂上がりなどに、ご自宅で浴衣を着てみてください。丈は短めに、衿元は少しゆったりと着て、夜風に当たりながらベランダで冷えたビールでも飲んでいただくと、格別な気分になると思いますよ」
想像しただけでも幸せ度数が上がってまいりました!
小川「自宅というのは、極めてリラックスできる場所。その空間で着る浴衣は、さらに心を安らかにする役割を果たしてくれると思います。温泉に行って、旅館で浴衣を着ると、なんだか特別な気持ちになりませんか」
はい。温泉の後に浴衣を着て、窓からの景色を眺めると、とてもほっとした気分になります。
小川「そうでしょう。自宅でもちょっとした旅気分になり、非日常の世界に連れて行ってくれるはずです」
綿絽を素肌に着る。ワンランク上の “おうち浴衣”
絽目を通って体に入り込む風も心地よく、見た目にも爽やかな印象の綿絽。白地「向日葵」3万9000円(反物)/竺仙小川「“おうち浴衣”には、気軽に洗濯のできるコーマ地がおすすめですが、大人の女性には、
綿絽の浴衣も試して欲しいと思います。透けるほど薄くて軽い生地なので、襦袢を合わせて着ることが多いのですが、そうなると涼しさが感じられないことも。ところが湯上がりの素肌にそのまま着ると、絽目から風が通って非常に涼しいんです」
自宅なら多少透けても気になりません。
小川「“おうち浴衣”で綿絽を着たら、とても極上な時間になると思いますよ」
大人の女性の贅沢ですね。格別な夏の夕べになることは間違いありません!
ソーシャルディスタンスに最適な浴衣、注染
竺仙さんの浴衣には柄や色に奥行きがあるように感じるのですが、何が違うのでしょうか。
小川「竺仙では昔から扱っている注染(ちゅうせん)の浴衣というのがあります。注染とは柄部分に染料を注いで染める技法のことで、表と裏の柄が同じように出ることや2色、3色とカラフルに染められるのが特長です。
何年か前に、上野駅で隅田川の花火大会に行く人たちがタクシー乗り場で並んでいるのを見かけたことがありました。ほとんどの皆さんが浴衣で、その様子を遠くから見ていたのですが、明らかにプリント柄よりも注染の浴衣は地色とのコントラストが際立っていたんです。人と人との距離を開けましょうと言われている新しい生活様式の中でも、注染は美しさが際立つのではないでしょうか」
友人との待ち合わせ場所で待っている姿も素敵だと思ってもらえますね!
小川「注染は小さな柄や落ち着いた色でも非常に遠目が効くんです。すかっと染め上がっているこのコントラストこそ、江戸っ子の美意識ですね」
“おうち浴衣”こそ、粋に着こなすための近道
小川「よく浴衣の粋な着こなしを教えてくださいという質問をいただきます」
はい、伺おうと思っておりました……。
小川「これはとにかく着慣れること。イベントだけではなく、せめてその前に何度か着てトレーニングをして、振る舞いやご自身に似合う着こなしを身につけて下さい。
遠くのものを取ろうとした時に、伸ばした腕の袂をもう片方の手で押さえると美しく、そして取りやすいと実感できるでしょう。また衿や裾の長さも、どう着るとかっこよくすっきりと見えるのか、品よく見えるのかも分かってきます。それこそが粋な着こなしに繋がります」
そこで“おうち浴衣”ですね!
小川「そうです。素敵だなと思った女性の仕草を観察することも勉強になりますよ」