初心者さんが浴衣を着こなすためのテクニック
最後に、初心者さんが浴衣を楽しむためのコツもうかがいました。
●浴衣ときものは違うことを理解する小川「着付け教室に通って、しっかりときものの着方を学んでいる方も多いと思いますが、きちんと着るということは、隙がないということ。その着方で浴衣の持ち味を生かせるかというと、必ずしもそうではありません。個人的には、衿元の合わせ方など、少しゆったりと着ていただきたいなと思います。
●衿の抜き加減で粋にも野暮にも。自分のベストな抜き具合を見つける小川「最近は後ろの衿を大きく抜く方が多いですね。衿を抜くと風が入るので、夏きものの着方ではあるのですが、抜き過ぎると品のない印象になることもあるので気をつけましょう。ベストは人によってそれぞれなので、自分で見つけるしかありません。抜き加減で粋にも野暮にもなりますよ」
●着崩れたと感じたら、直すべきは腰小川「着崩れると白地の浴衣がグレーになってしまうほど衿を触って直そうとする方もいますが、実は腰を直すといいんです。腰紐から指を通して、おはしょりを整えたり、下に引いてみてください。すると、上半身部分に感じていたゆるみや着崩れがすっきりすると思います。半日も着ていれば、どうしても着崩れます。そしたら直せばいいだけなので慌てないでくださいね」
●浴衣一枚、帯三本? 帯のアレンジで浴衣はもっと楽しめる巻いて締めるだけの簡単な兵児帯。素材や色にこだわってみると、大人の着こなしに。おうちでリラックスしたい時にもおすすめ。麻兵児帯3万5000円/竺仙浴衣帯の代表格といえば半巾帯。結び方も多様で、「浴衣の魅力を引き出してくれる帯」と小川社長もイチ押しです。道屯花織半巾帯4万円/竺仙長襦袢を合わせ、浴衣をきもののように着るとしたら、見た目にも涼やかな麻素材の八寸帯がおすすめ。麻八寸帯4万8000円/竺仙小川「合わせる帯によって、浴衣姿の印象は変わります。兵児帯は体に巻きつけるだけなので、リラックスして過ごしたい “おうち浴衣”に向いています。半巾帯はいろいろな結び方があるので面白いですよね。粋な浴衣の着こなしを目指すなら半巾帯をおすすめします。夏きものとして着るなら、麻などの八寸帯がよいでしょう」
過ごすことで感じた、“おうち浴衣”の魅力
E子、“おうち浴衣”がすっかり定着。タンスの中には、母が仕立ててくれた浴衣やいただきものの浴衣が何枚もありました。料理や掃除などの家事をする時はタスキをかけると、袂を気にせず快適に作業ができます。取材をした6月半ばから、早速“おうち浴衣”を実践。お風呂上がり、拭き残しも気にせず補正もブラジャーもなしで浴衣に着替えます。すると窓から入ってくる風が、そのまま袖口や身八つ口から体にすっと届くではありませんか。少しゆったりと着た胸もとやうなじからも、短めに着た裾からも涼を感じます。浴衣がこんなにも涼しい衣類だったとは!
故きをたずね、新しきを知る、まさに温故知新体験です。部屋着を浴衣にしただけなのに、こんなにもリラックスできて、楽しい気持ちになれるなんて、試す前には想像もつきませんでした。
さらにもうひとつ、嬉しいことが。実は本を見ながらでも苦戦していた矢の字結びが、わずか数分で結べるようになりました。さらに貝の口まで結べるように! 衿の合わせ方や抜き方、丈なども、その差に少し気がつけるように。浴衣の着こなしがほんの少し、様になったかも!?
「竺仙」の小川文男社長、繁忙期にお時間を作ってくださいまして、ありがとうございました。おかげでE子は毎日のように“おうち浴衣”を楽しんでおります。心を健やかに過ごすためにも、そして粋な浴衣姿を目指すためにもしばらく続けます!
2020年夏、これまでで一番浴衣を楽しむことになりそうです。
竺仙で販売スタートしたオンライン限定のマスク。肌触りのよい浴衣地で、小さな面積でも柄が美しく見える生地だけを厳選して製作しています。販売開始後すぐに売り切れという状態が続いているほどの人気。800円/竺仙小川文男(おがわ・ふみお)さん天保13(1842)年、江戸時代から続く江戸小紋、浴衣を中心とした呉服を手がける「竺仙」五代目。伝統を大切にしながらも現代の感覚を巧みに溶けこませ、江戸の粋を現代に伝え続けています。 表示価格はすべて税別です。 構成・文/笹本絵里 中島敦子 ※この連載で取り上げて欲しい、皆さんの「いまさら聞けない」きものの基本&疑問をぜひ お聞かせください! 件名「イチから始めるきもの道」と明記し、メールにてお寄せください。 E-mail:k-salon@sekaibunka.co.jp