——自然に、というのは大森立嗣監督が求めていらっしゃるところでもあったと思うんですが。
奥平:そうですね。考えてもわからないことばっかりなので、監督には自分が感じたことをそのまま出していいよって言われて、そうしようと思ってやっていました。
——奥平さんは自由にやらせてもらえるのが楽しかったとおっしゃっていて、一方で阿部さんはナマを求められているのが緊張する、と。同じ大森監督の現場なのに、まったく感想が異なるのが面白いです。
阿部:僕が変な知識を培っちゃってるからっていうのはあると思いますね。ナマは恥ずかしい、みたいな(笑)。自分をさらすのがナマだとは思わないけど、ナマっぽい芝居をするっていうのが……。大森監督って、「セリフじゃないことも言っていいです」みたいな、そういう自由な時間があるんです。僕にとっては、それがけっこう恥ずかしいことで。遼っていう人を好きだったらいいんだけど、好きじゃないから(笑)。僕にとっては難しかったですね。けっこう長回しが多くて。ね?
奥平:僕は初めてなので、それが普通だと思っちゃったんですけど。
阿部:そうだよね。長回しでお芝居をずっと続けること自体は苦じゃないんですよ。でも、「ここからここまで撮ります」と言ったあとで、その倍の時間、セリフも決まってないところでカメラを回すから。けっこう恥ずかしいんですよ。セリフにないことを言うって。
奥平:全然わからないです(笑)。
阿部:周平はいいんだよ。周平はもう、こういう人間だっていうのがあるでしょ? 遼は、ホントか嘘かもわかんないようなことばっかり言って、そんな男が言う言葉って何?って思って。長回しでセリフにないことを言っているのは、焼き肉を食べているシーンで「箱根を知らない?」みたいなことくらい。あそこは遼の言葉としてアドリブが出ました。
奥平:あのシーン、けっこう長かったですよね。
阿部:長かった。ただ焼き肉を食べてるだけなんだけどね。
奥平:シーンの半分以上、食べてました(笑)。
バッティングセンターの場面も長回し。使われているのは打ち終わってからですが、実際はかなり長く打ちながら騒いだと阿部さん。