——焼き肉屋のシーンは、家族感が出てましたね。
阿部:あそこが唯一じゃないですか?
奥平:周平も笑っているので、けっこう珍しいシーンですよね。
阿部:笑顔、ないもんね。
奥平:ほぼほぼないです。
阿部:疑似家族だけど、一番……。
奥平:家族感はありましたよね。
阿部:たぶん監督は、そういうところも撮りたかったんですよね。
——周平にとって、遼はどんな存在だったと思いますか?
奥平:周平として、すごく影響を受けているのは遼だと思っていて。遼にはひどいこともされているんですけど、一緒にいる時間とか一緒にやっていることとかを見ると、お父さんっていう感覚が大きいのかなと思っています。周平にとっては、自分が守らなきゃいけない冬華の存在が大きいんですけど、遼が2回目にいなくなったあと(髪に)メッシュが入っているのも、遼の代わりみたいな思いもあったのかなって。
——遼が去り際に、冬華のことを周平にお願いするシーンも印象的でした。
奥平:いやなこともされるけど、遼がいなくなるのは悲しいこと、っていう気持ちでした。冬華をよろしくって言われるのも、お父さん感が出ているし。
阿部:僕は、逆で。遼っていう人の一番弱いところが出ちゃった感じがするんですよね。そこから逃げなきゃっていうことが一番で。それで、綺麗事を言う。周平からはお父さんっぽく見えたかもしれないけど、相当弱い。だって、冬華には一言も言葉をかけてないし。ダメな男ですよね。
——忘れられない、もしくはちょっとひっかかっている。そんなシーンがあれば教えてください。
奥平:僕は、ビンタがもう……。一番です。心の底から考えちゃって、自然と涙が出るっていうのが初めての体験だったので。
阿部:あれはいいシーン。親子って感じ、したもんね。僕は、役者としてダメだなって思ったシーンがありました。海岸で待ってる親子(秋子・周平)のところに、客の残りの刺し身を持ってって食べるところ。気持ち悪いなと思っちゃったんです。役者としては、「おいしい」って思って食べなきゃ。
——阿部さんは、遼に対して理解しがたいところがずいぶんあったようですね。
阿部:遼っていう人が嫌だと思ってましたね。ずっと逃げてるし……なんか、嫌だなぁって。初めてです、こんなに共感できない人。でも、そういう役ってなかなかできないから、演じられたのはよかったなって。遼がダメなぶん、周平に目がいってくれるといいなと思います。
本作がデビュー作となる奥平さん。大森監督は、「彼が偉かったのは、演技の中で嘘をつかないことをやり通せたこと」と奥平さんを称賛。