「タクシー最大の価値は24時間365日、走り回っていること」──川鍋さん
川鍋 私はタクシーの価値とは結局、「24時間365日、あらゆるところを走り回っていること」だと思っているんです。東京にタクシーは約4万台、救急車は約300台。タクシーは緊急時にいち早く駆けつけられる。そのことに気づいて8年前に始めたのが「陣痛タクシー」です。
事前にご住所と病院を登録していただいた妊婦さんが専用回線に電話をすると、24時間いつでもすぐにお迎えに上がり、病院にお送りするというサービスで、毎年多くのかたにご利用いただいています。また、全車に防犯カメラを積んでいるため、警察からの依頼で映像を提供し、事件や事故の捜査に協力することも日常的にしています。
松岡 タクシーが果たす役割はどんどん増えているのですね!
全自動化も近い?タクシーの未来予想図は
松岡 ところで、タクシーは近い将来、自動運転になるのでしょうか。
川鍋 自動運転にはなりますが、「無人運転」にはならないというのが、私の見立てです。タクシーはこの先、人だけでなく物も運び、小さなコンビニ的な役割も担う存在になると思っています。無人でそこまでのことはできません。乗務員は運転技術より、ホスピタリティが求められる時代になっていくでしょう。
松岡 一朗さんには未来のタクシー像がはっきりと見えているのですね。そのビジョンを実現するためには、何が大事だと思われますか。
川鍋 まずは自分が切り開いていくことですね。修造さんがウィンブルドンでベスト8になられたことで、みんなが「日本人でも世界で戦える」と思ったように、「ここまではいける」というのを示すことが大事だと考えています。同業者のみなさんと一緒にタクシー業界全体のクオリティを上げていくこと。それが自分の使命だと思っています。
松岡 “一朗チャレンジ”はまだまだ続きますね。世界に誇れる日本のタクシーのさらなる進化を、心から楽しみにしています!
川鍋さんより〜
オンライン対談を終えて
2017年にトヨタが発表した「ジャパンタクシー」は利用者にも乗務員にも優しい仕様。深こい藍あい色のボディに東京2020のエンブレムが映えています。「社員から『熱すぎます!』『日本交通の松岡修造』などとよくいわれます」と楽しそうに話す川鍋さん。
「修造さんのご活躍は昔から拝見してきましたが、これほど華麗なる転身を果たされたトップアスリートのかたは珍しいのではないでしょうか。対談では、画面越しでも、修造さんのほとばしる熱い思い、情熱が伝わってきました」。
撮影/鍋島徳恭 スタイリング/中原正登〈FOURTEEN〉(松岡さん) ヘア&メイク/井草真理子〈APREA〉(松岡さん) 取材・文/清水千佳子 撮影協力/日本交通
『家庭画報』2020年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。