※『家庭画報』2020年8月号掲載。この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。ご紹介したイベント等の内容は変更になることもありますので、HPなどでご確認ください。
ナビゲーター・文/結城昌子(アートディレクター)革新的な画家の創造力は、時に画面をはみ出して生活全般に向かうことがある。
この展覧会は、暮らしの中にモネとマティスが仕掛けたそうした「創造の装置」にフォーカスしている。
巣籠もりの中でも人は楽園を築くことができる、というこの時期にぴったりの企画だ。
《ジヴェルニーの積みわら》クロード・モネ 1884年 油彩、カンヴァス ポーラ美術館蔵フランスの小村、ジヴェルニーに今も残るモネの邸宅。邸の前には大きな庭が広がっていて、季節毎にさまざまな花で埋まる。極めつけは、地下道をくぐった先に広がる、日本風太鼓橋をかけた池。
モチーフを探すように、セーヌ川沿いを転々としたモネは、晩年ついに、自由自在な写生ポイントを邸の敷地に自前でつくりあげてしまった。
《睡蓮の池》クロード・モネ 1899年 油彩、カンヴァス ポーラ美術館蔵有名な「睡蓮の池」がそれだ。
管理する庭師に聞くと、当時モネは睡蓮が浮かぶ位置まで指定したそうだ。光の移り変わる瞬間をつぶさに観察し、描こうとしたモネ。彼は画家であると同時にガーデナーでもあったのだ。
《ポール=ドモワの洞窟》クロード・モネ 1886年 油彩、カンヴァス 茨城県近代美術館蔵モネがアウトドア派だとすれば、マティスは室内に「創造の装置」を仕掛けた、究極のインドア派と言えるかもしれない。
《鏡の前の青いドレス》アンリ・マティス 1937年 油彩、カンヴァス 京都国立近代美術館蔵虫垂炎をこじらせ暇をもてあました若い頃、母親から贈られた絵の具セットに魅せられ、画家の道を歩きだしたマティス。
晩年には癌の手術を受け、ベッドと車椅子に縛りつけられた不自由な体を引き受けながら、絵筆を離れ、切り紙絵という新しい挑戦を始めた。
《ミモザ》 アンリ・マティス 1949年 切り紙絵 池田20世紀美術館蔵アトリエを構えた南仏ニースのレジナ・ホテルの部屋で、鳥かごで鳥を飼い、所狭しとたくさんの観葉植物を置いた写真が残されている。
作品《リュート》はそのレジナ・ホテルで描かれた。異国趣味の模様に触発され、油彩画からタペストリーへも展開されている。
《リュート》アンリ・マティス 1943年 油彩、カンヴァス ポーラ美術館蔵お気に入りの柄に囲まれて、ヴィヴィッドでかつ安らぐ部屋の色や家具を探し続ける、こだわりの生活者でもあった。
画家たちは、自分流に創造のエネルギーを蓄え、その果てに私たちを楽園へと連れて行ってくれるのだ。
結城昌子(ゆうき まさこ)アートディレクター、絵本作家。近書にアート絵本シリーズ『小学館あーとぶっく14広重の絵本』『小学館あーとぶっく15 北斎の絵本』。オフィシャルサイト:artand.jp撮影/永野雅子 『モネとマティス-もうひとつの楽園』
フランス美術の巨匠クロード・モネ(1840~1926)とアンリ・マティス(1869~1954)。庭や室内の空間を自由に構成し、現実世界に「楽園」を創り出した2人の画家に焦点を当て、創作の秘密に迫る。
ポーラ美術館〜2020年11月3日まで
休館日:会期中無休(展示替えのため臨時休館あり)
入館料:一般1800円
TEL:0460(84)2111
URL:
https://www.polamuseum.or.jp/ 表示価格はすべて税込みです。
構成/白坂由里
『家庭画報』2020年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。