「何かが起きると、自分に何ができるかを考えます」──さだまさしさん
恒例の全国ツアーが中止や延期になる中、NHKなどでのトーク番組やインターネットを使ったライブ配信で、それぞれの立場で新型コロナウイルス禍と闘っている人々を応援し続けている、さだまさしさん。
その最新アルバム『存在理由~Raison d’être~』が、5月にリリースされた。ジャケットにデザインされた音楽記号と楽器で描いたタイトルは、さださんの自筆によるものだ。
「Raison d’être(レゾンデートル)は、他者ではなく、自身が求める存在価値、存在理由を意味するフランス語。自分が生きる理由、つまり生きがいと訳すこともできます。僕にとっての生きがいは、音楽ですからね」
収録された全13曲は、実に多彩。1曲目は、東京藝術大学の学長を務めるヴァイオリニストの澤 和樹さんが作曲・演奏する「さだまさしの名によるワルツ」。
2014年に、さださんがアニメ映画の主題歌として作った「銀河鉄道の夜」に、岩崎宏美さんに書いた「残したい花について」や、関ジャニ∞に書いた「奇跡の人」、07年の音楽番組で歌った小田和正さんとの幻のコラボレーション曲「たとえば」や、CO₂削減を訴える23年前の歌をアップデートしてハワイアンにした「ペンギン皆きょうだい2020」など、今のさださんの歌声と巧みなアレンジで新たな味わいに仕上がった、さまざまな楽曲が並ぶ。
新曲も5曲あり、「ひと粒の麦~Moment~」は、異国での人道支援に半生を捧げ、昨年12月にアフガニスタンで凶弾に倒れた医師・中村 哲さんに捧げられたものだ。間奏・後奏にはベートーヴェンの「悲愴」が使われている。
「去年最も衝撃を受けた事件です。中村先生を讃えたいという思いと、これを忘れてはいけない、何かに刻んでおきたいという思いから、勝手に書かせてもらいました。
そしたら先日あるかたから、中村先生が宮沢賢治のファンだったことや、クラシック音楽、なかでもベートーヴェンがお好きだったことを伺って。まさにセレンディピティ(予期していなかった素敵な発見といった意味)、神様からいただいた曲のように感じています」