被爆ピアノもロケーションも。本物に囲まれて撮影
東京で育った大学生の江口菜々子(武藤十夢)は、母・久美子(森口瑤子)が広島の調律師・矢川に祖母のピアノを寄贈したことを知り、被爆ピアノコンサートへ。被爆2世の母から広島のことや祖母のことなどを知らされてこなかった菜々子は、それらや被爆ピアノのことを知りたくなり、コンサートで出会った矢川のトラックに乗せてもらい広島に向かうのですが……。
劇中に登場する被爆ピアノやトラックはすべて本物。調律を行う工房のシーンも矢川ピアノ工房で撮影されました。現場には矢川さんがずっといらしたそうで、「矢川さんが工房にいるように、調律しているように、もし菜々子さんが訪ねてきたら、どういうふうに対応するだろうか……。矢川さんの真似をしてはいけないけれども、矢川さんの心根というか、どういうふうに人を迎えたり、話をするんだろうかということは、近くにいてくださったおかげで、人となり、佇まいがとても参考になって。僕がその立場に立たされたらこうかなと考えながら、矢川としていられるように努めました」と佐野さん。
矢川さんがそばに。その状況は、佐野さんにとって「すごく安心感がありましたし、心強かったです」。ただし、同時に「嘘をやっちゃいけないって戒めにもなりました」。
被爆ピアノに触れ、「本物の迫力がありました。今、自分がたたいて、被爆をくぐり抜けて出てくる音のリアリティが」と佐野さんは語る。