知らないことをどう学べばいいのか考えさせられる
本作の製作発表の際、矢川役を受けるにあたり、「責任重大」だと話していた佐野さん。
「映画の作業は、この国のみならず、この世界がここまできた歴史といやが上でも向き合わざるを得ない時間が少なくありません。昭和の時代の(映画)『226』にしろ、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』にしても、最近では『Fukushima50』もそうですし……。『おかあさんの被爆ピアノ』も、この国が背負ってきた歴史の中に生かされているということを意識させられて。
僕らの世代でも歴史上の真実を、特に近現代史においては教わらないままにきたように思えます。頭ではわかっていても、その痛みみたいなことの実感を得ることは難しい。僕らの世代でもそうなんだから、その子供、そのまた子供となると、ますますそれは困難になっていくような気がします。だから、この映画は、事実をもとにしたフィクションではあるんだけど、“あ、こういうことだったんだ”っていう体感を共有できれば、という思いで臨みました」
「重要ですよね、こういう作品は」と本作を語る佐野さんは、「知らないことに対して、どのように学んでいったらいいのかを考えさせられます。この国に流れてきた歴史を、単なる知識じゃなく体感として知り、誤って伝えられてきた歴史や埋もれてしまった歴史に向かい合い、そうして私たちはここにいるんだっていうことがわかれば」と続けました。
「広島、長崎、第五福竜丸、福島という点を結びつけて見えてくるものがある。なぜ核の脅威に晒され続けてきたのかを知らなければ」