【名画を巡る30日】『リチャード・ミルズの肖像』―世界初「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」へようこそ16

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バトーニ　『リチャード・ミルズの肖像』

ポンペオ･ジローラモ･バトーニ 《リチャード・ミルズの肖像》1759年頃 油彩・カンヴァス ©The National Gallery, London. Bought, 1980
18世紀、若者たちが見聞を広めるため、ヨーロッパ文化の源であるイタリアへ旅行することが一大文化現象となりました。この展覧会における第4章のタイトルはグランド・ツアーですが、今日で言えば大学の卒業旅行にヨーロッパを回るのと同じ感覚でしょう。ただ、時間もお金もかかりましたから、特権階級の若者たちに限られていました。滞在先では絵画や家具、工芸品を購入し、大量の美術品がイギリスに流れていったといいます。また自身の肖像画を依頼することも流行しました。ここでは古典の彫刻作品とともにイタリアの地図が描かれ、モデルのミルズが指で示しているスイス周辺からイタリアに入ったと推察されます。バトーニの肖像画は、モデルの描写であると同時に、旅そのものの描写になっていたとされ、それが肖像画家としての彼の人気の理由の一つだったのでしょう。

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写真／小野祐次
展覧会プロデューサー。パリをベースに、今回の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」、「モネ展」（2015年）、「オルセー美術館展」（2014年）など、30数年にわたり数十の大型展覧会の企画に携わる。

日仏英の3か国語を操り、美術、ファッションなどの分野でジャーナリストとしても活動。音楽、演劇、料理、アンティークなどアール・ド・ヴィーヴルをこよなく愛する。