今回のゲスト、ドメニコ・スキラーチェさんはイタリア・ミラノの高校の校長先生。コロナ禍で休校になった際、生徒たちに「理性と思いやりを持って過ごすことの大切さ」を説くメッセージを送り、世界中から共感を得たかたです。「ボンジョルノ!」から始まった対談は、日本語とイタリア語、ときに英語も飛び交うものとなりました。 *『家庭画報』2020年9月号掲載。この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。本取材は感染予防対策を徹底して実施しました。
2020年6月16日の出勤前、ご自宅で対応してくださったスキラーチェさん。アートに彩られた部屋を見た松岡さんは、「お洒落ですね!」と感激していました。*本取材は感染予防対策を徹底して実施しました。松岡さん・スーツ、シャツ、チーフ/紳士服コナカ第25回
アレッサンドロ・ヴォルタ高校 校長 ドメニコ・スキラーチェさん
ドメニコ・スキラーチェさん DOMENICO SQUILLACE1956年南イタリアのカラブリア州・クロトーネ生まれ。大学の哲学科を卒業後、ミラノの高校で26年間、文学と歴史の教師を務める。その後、ロンバルディア州とピエモンテ州で6年間校長を務め、2013年9月にミラノの理科系名門校、アレッサンドロ・ヴォルタ高校の校長に就任。生徒たちへ送ったメッセージをもとにした書籍『「これから」の時代(とき)を生きる君たちへ』(小社刊)が2020年5月に刊行された。趣味は旅行、読書、映画鑑賞。国境を超えて感動を呼んだ希望のメッセージ
松岡 スキラーチェ先生が生徒さんたちのために書かれた1通の手紙が、世界中で大きな感動を呼んでいます。日本では本にもなりました。
スキラーチェ 私が校長を務める高校の生徒たちに書いたものが、これほど反響を得るとは思ってもいませんでした。心から驚いています。
「先生の手紙は、僕も含めて世界中の人たちの心を動かしました」── 松岡さん
松岡 手紙を書こうと思われたきっかけを教えていただけますか。
スキラーチェ イタリアでは今年2020年2月24日から新型コロナウイルスの感染拡大がひどかったミラノがあるロンバルディア州の学校が閉鎖になり、私たちのアレッサンドロ・ヴォルタ高校も休校せざるを得なくなりました。
その10日後にはイタリア全土の学校が閉鎖になったのですが、私たちの国ではこれまで、戦時中でさえ、学校が休みになったことはありません。まさしく前代未聞の出来事でした。
その決定も急なもので、日曜日に「明日の月曜日から休校に」という連絡が来たのです。私は生徒たちに、これからの日々をどう過ごしたらいいか、指針となる言葉を送る必要があると思いました。
松岡 そのお手紙がインターネットやテレビ、本を通じて広まり、僕も含めて世界中の人たちの心を動かしたわけですが、ご自分ではなぜだと思われますか。
スキラーチェ 何千回も自問したのですが、おそらく、不安や恐怖を感じている人々が「聞く必要があった言葉」だったからではないでしょうか。
「確かに大変な状況だが、アイデンティティを保っていれば大丈夫」という希望のメッセージとして受け止められたのだと思います。
松岡 まさしく希望を感じるメッセージでした。
流暢な英語も交え、熱く語る松岡さん。イタリアと日本、両方の国旗に共通する「赤」のネクタイがお似合いでした。