1948年にシルクスクリーンと呼ばれる新たな技法がスカーフの印刷に使用されるようになり、プリントの質が向上し、デザインと色の数を増やすことができるように。その後も技術革新を続けながら、今では7万5000色もの色見本から配色を決め、デザイン画を元に色専門の職人が数十種類もの配色を考えているとのこと。
また、最初のカレが誕生して以来、生み出されてきたデザインは2500以上。
その制作工程は(1)アーティストとのデザインづくり→(2)リヨンのアトリエでの版づくり→(3)リヨンのカラリストによる配色→(4)プリント作業→(5)縁かがり、と大きく5つに分けられ、最長でなんと2年もの歳月を要します。
優れたデザインと匠の技が融合してでき上がるエルメスのスカーフは、幼い頃からの憧れを叶えるのに最もふさわしい存在だったのです。
制作工程(4)にあたるシルクスクリーン印刷は、リヨン近郊にあるアトリエで。デザイン画で使われている色を1色ずつ1枚の枠(版)で、厳密な順番に従ってプリントするという伝統的な印刷技法で作られています。42色使用したデザインであれば、枠も42枚必要という気の遠くなるような作業です。1色刷るごとに仕上がりのチェックを行っています。©Vincent Lerouxこちらは、シルクスクリーン版の最終チェックの様子。©Vincent Leroux制作工程(5)にあたる、エルメスのスカーフならではの縁かがり(フランスかがり)。一方のスカーフ角を固定し、シルク糸を使って、巻きかがっていきます。すべて手縫いのため、90×90㎝のカレの場合、この作業に1枚につき、40分ほど要するそう。©Vincent Leroux30年以上愛用しているカレは
人生の節目にパリで出合った1枚
パリコレに初めて来た記念にと、人生初のエルメスのスカーフを購入したのは、パリのフォーブル・サントノーレにあるエルメスの第一号店。たくさんのスカーフを出していただいた中から、見た瞬間に「コレ!」とぴんと来たのが、トリコロールカラーのカレでした。
10代の頃から大好きなプレッピーやトラッドスタイルが薫る色合いに一目惚れしたのです。そのとき直感した「好き」の軸はその後もブレることなく、今もって現役で活躍中。30数年もの間、全く色褪せることなく、古臭く感じることもないのは、やはりエルメスだからだと思います。
<左>おおさわさんが初めて手に入れたエルメスのスカーフがこちら。「ベースが白なので、顔映りが良く、季節を問わず活躍しています。カレのシルクツイル素材は、使えば使うほど柔らかく身体になじんで、どんどん巻きやすくなるということを30数年愛用して実感しました」。<右>盆栽が趣味だったお母さまへのお土産として購入したのがこちら。「盆栽」などの漢字がプリントされている珍しいデザイン。額装して飾っても素敵な
「身に着けるアート」
20代で、エルメスのフォーブル・サントノーレ店で憧れのスカーフを手にして以来、パリに行くたびにスカーフを買うのが私の楽しみになりました。店内には、数えきれないほどのスカーフが揃っており、山のようなスカーフの中からお気に入りを見つけ出すのは、まるで宝探しのよう。スカーフ好きの母へのお土産にと買い求め、母が他界した今では私が受け継いでいます。
「首が何本あっても余るわ」と母が笑ったくらい、何枚買ったかわからないほどあるスカーフの中から、特に思い出に残っているのがこの盆栽柄のカレ。盆栽が趣味だった母のために選んだこの絵柄は、葉の1つひとつに至るまでとてもこまやかに描かれていて、まさにアートのような一枚。これは、自分で実際に身に着けるというよりも、母の思い出とともに額装して飾っておきたいなと思っています。
今では、私のお洒落になくてはならない存在となったスカーフ。年齢を重ねれば重ねるほど、顔まわりを華やかに縁取ってくれるスカーフの威力を痛感しています。
しかし、スカーフは、実は選ぶのが難しいアイテム。広げて見たときと、衿元にあしらったときの雰囲気は違いますし、顔に近い分、色や柄選びも迷いがちで、何をポイントに選んでいいかわからないという方が多いのです。
皆さんも、お土産でいただいたり、色や柄がなんとなく気に入ったからという理由で衝動的に買ったスカーフは、結局使いこなせないまま箪笥の肥やしになっているのではないでしょうか? そんなふうにならないために、次回は、スカーフ選びのコツと、上手なアレンジ術についてお話ししますので、お楽しみに!
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第20回 エルメスのスカーフ、選び方とアレンジのコツ、教えます>>
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