美声を生かしてミュージカルでも活躍。2019年には、ミュージカル『スリル・ミー』と『母と暮せば』の演技で読売演劇大賞 優秀男優賞と杉村春子賞を受賞した。舞台を通して学んだ役を生きることの大切さ
一方で、画家の母の影響で幼少期から油絵を描くなど、はやくから芸術にも親しんできた松下さん。
美術系の高校に通っていた3年生のときに観た映画『天使にラブ・ソングを2』に感動し、歌手を志すようになった。
21歳でCDデビューし、絵を描きながら自作の曲を歌う“ペインティング・シンガーソングライター”として活動。
その後、ブロードウェイ・ミュージカル『グローリー・デイズ』(2009年)で初舞台を踏んだのを機に、俳優としても活動するようになり、舞台などで実力を発揮。
幾度か落選しながらもNHK連続テレビ小説のオーディションを受け続け、『スカーレット』への出演を実現した。
「いつも応援してくれている母が大喜びしたことが、何より嬉しかったですね。多くのかたが僕を知ってくださった今、作品的にも役柄的にも、もう1つ大きなチャレンジをして、その先を見てみたいなと考えています」
将来がますます楽しみな33歳は、演じるときには“役を生きる”ことを大切にしているという。
「舞台を通して学んだことです。毎回毎回ベストなものを届けようと思うと、自ずと必死になる。その必死さみたいなものが自分の中でハマった瞬間に“役を生きるって、こういうことなんだな”と感じて」。
そんな瞬間に立ち会えた観客は、なんと幸運だろう。
生の舞台公演が、いろいろな意味で貴重なものとなってしまっている昨今だが、「劇場は、いつの時代も人々が娯楽や人生の意味を求めて足を運んでいた場所。日常的な場所に戻していきたいですよね」と松下さん。
「先が見えづらい状況ではありますが、皆さまにとってもこの『ベイジルタウンの女神』が、今の状況を脱する一つの足がかりになったら嬉しいです。安全に、存分に楽しんでいただけるように、皆で力を尽くします。どんな内容になるかはわかりませんが(笑)、面白いものになっていることは確かです」
松下洸平/まつした こうへい
1987年、東京都出身。2008年に「STANDUP!」でCDデビュー。 09年には俳優デビューし、18年の舞台『母と暮せば』、ミュージカル『スリル・ミー』の演技で文化庁芸術祭演劇部門新人賞などを受賞。出演映画『燃えよ剣』が公開待機中。
ケムリ研究室 no.1
『ベイジルタウンの女神』
世田谷パブリックシアター2020年9月13日~27日
兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール2020年10月1日~4日
北九州芸術劇場 中劇場2020年10月9日・10日
S席1万2000円ほか
キューブ:03(5485)2252
公式URL:
https://www.cubeinc.co.jp/archives/theater/kemuri_no1作・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ
振付/小野寺修二
映像/上田大樹
音楽/鈴木光介
出演/緒川たまき、仲村トオル、水野美紀、山内圭哉、吉岡里帆、松下洸平、尾方宣久、菅原永二、植本純米、温水洋一、犬山イヌコ、高田聖子 ほか
表示価格はすべて税込みです。
取材・構成・文/岡﨑 香 撮影/筒井義昭 ヘア&メイク/五十嵐将寿 スタイリング/渡邉圭祐
『家庭画報』2020年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。