心と体の新習慣 第5回(全11回) 世界的に新型コロナウイルスの感染が止まりません。一方で、外出自粛などの時期を経て、多くの地域で新型コロナウイルスと共に生きる“ニューノーマル(新しい常識・常態)”が始まっています。産業衛生や感染症などの専門家に、今後の新しい生活様式について聞きました。
前回の記事はこちら>> ※2020年6月30日現在の情報をもとに記載しています。『家庭画報』2020年9月号掲載。この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。 【心の安定を図る】
あえて、とりとめのないことをしてみる。人間には不要不急が必要です
〔お話ししてくれるのはこの方〕斎藤 環先生精神科医。筑波大学
医学医療系
社会精神保健学 教授
専門は社会的ひきこもり。千葉県船橋市「あしたの風クリニック」(完全予約制)で診療を行う。オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン共同代表を務め、対話を用いた精神的ケアの実践にも取り組む。閉じこもりがちの日々、とげとげしさは配偶者に向かう
社会的ひきこもりを専門とする精神科医の斎藤 環先生は「人間は社会的動物なので、閉じこもりがちの生活が長びくと、うつや被害的になりやすいなど心に悪影響が及ぶ」と指摘します。
心理学的には「退行」が起こる、つまり気持ちの有りようが幼稚化して考え方の幅が狭くなり、0か100かの白黒思考で極端な判断をしてしまう。
さらに、怒っているのは自分自身なのに、あたかも他人が自分に対して怒っているように感じる「投影性同一視」が生じ、相手の言動に過敏に反応して突然怒鳴りつけたりもする──。
「このような傾向は多かれ少なかれ誰にでも見られ、矛先は往々にして配偶者に向かいます。
在宅時間が増え、夫婦が密に接触せざるを得ない息苦しさの中で、価値観の違いが露呈するのです。特に今の時期は清潔意識のギャップが相手への不満を募らせ、言葉を尖らせる場面も多いのではないでしょうか。
それまで一定の距離感の上で平和を保っていた夫婦関係が危機に直面する恐れは非常に大きいといえます」
部屋を別にすれば解決する問題ではありません。一つ屋根の下にいる限り相手の動向が気になり、心理的に密であることに変わりはないからです。