——撮影が始まって1週間が過ぎてからは、いかがでしたか?
「そのあとの苦しさは、理解できるというか、わかりやすい苦しさですね。最初の1週間で僕ら以外のキャストがたくさんいるシーンは終わって、そのあとの2週間は基本的に翔太とタカラ(芋生 悠)、2人のシーンなので。逃げるっていう行為自体は、楽しさが含まれていると思うんです。無自覚かもしれないですけど、高揚だったり興奮だったりがあって。でも、2人しかいない世界で向き合うって苦しいじゃないですか。だから、そこまでの苦しさとは違う、わかりやすい苦しさがここから2週間あるんだっていう、ちょっとした欝感はありました」
——村上さんから、翔太とタカラはどのように見えていましたか?
「タカラには、誰かが救いの手を差し伸べないとどうしようもないことが多いと思うんです。僕がタカラだったら、生きていられるかなって思ってしまうから。ただ、芋生さんが演じるタカラには、生きていく強さがあって。それを体現したって、すごいと思います。でも、翔太が背負っているものは普遍的で。結果的に犯罪に手を染めていますけど、誰しもきっかけと環境さえあれば、一線を越えてしまうことがありえてしまうと思うんです」
外山監督とは、2017年の短編映画『春なれや』以来のタッグ。「外山文治という人だけが描いている世界が確実にある」と村上さん。