心と体の新習慣 最終回(全11回) 世界的に新型コロナウイルスの感染が止まりません。一方で、外出自粛などの時期を経て、多くの地域で新型コロナウイルスと共に生きる“ニューノーマル(新しい常識・常態)”が始まっています。産業衛生や感染症などの専門家に、今後の新しい生活様式について聞きました。
前回の記事はこちら>> ※2020年6月30日現在の情報をもとに記載しています。『家庭画報』2020年9月号掲載。この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。 withコロナ時代のフレイル予防【実践編】
健康習慣の中でもフレイルの予防として注目されているのが運動、食事、口腔ケア、知的活動を中心とした人づきあいです。日常生活においてどのように取り入れていけばよいのか、それぞれの実践ポイントについて5人の専門家に伺いました。
今回は知的活動を中心とした人づきあいについて宇良千秋先生に伺います。
【脳と心】認知症発症リスクが高まりだす50代から趣味と仲間づくりで脳の若さを保つ
〔お話ししてくれるのはこの方〕宇良千秋先生白百合女子大学大学院修了。東京都健康長寿医療センター研究所で認知症の予防とケアの研究をしている。女性ホルモンの急激な減少と認知機能の低下は相関している
長生きすればするほど認知症を発症するリスクは高まり、女性では85歳を過ぎると3人に1人、90歳を過ぎると2人に1人が認知症という推計もあります。
その原因は不明ですが、更年期以降の急激な女性ホルモンの減少と認知機能の低下とは相関しており、男性よりも女性のほうが認知症になりやすいといわれています。
とはいえ、50代の女性にとって認知症は30年後のリスク。今の自分には関係がないと思うでしょう。
しかし、「50代からすでに脳の病理的な変化は始まっています」と宇良千秋先生は注意を促します。
認知症のうち、患者数が最も多いアルツハイマー型認知症は「アミロイドβ」と呼ばれるたんぱく質が脳内に蓄積することによって「老人斑」がつくられ、この老人斑が脳の神経細胞を死滅させることが発症原因の1つだと考えられています。
早い人では40代や50代からアミロイドβの蓄積がみられることがわかっています。
「アミロイドβの蓄積は防げませんが、脳の神経細胞のネットワークを強化して認知機能の予備力を蓄えておけばアミロイドβの影響を受けにくくなるので、発症を先延ばしできる可能性があります。そのためには、50代の今から将来のリスクに備えておくことが望ましいのです」と宇良先生はアドバイスします。