作品の概要を読んだだけで、これほどハマるキャスティングはないと思えた濱田 岳さんと水川あさみさん。本作で夫婦役を演じている。映画『喜劇 愛妻物語』は、いつまでたっても売れる見込みがない脚本家の豪太と、そんな豪太に絶望している酒好きの妻・チカの愛憎劇。映画『百円の恋』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞に輝いた足立 紳監督が、自身の夫婦生活を赤裸々に綴った自伝的小説を自ら映画化しました。本作で、チカが激怒していてもヘラヘラしているダメ夫・豪太を演じた濱田 岳さんと、ものすごい勢いで豪太に罵詈雑言を浴びせるチカ役の水川あさみさんに役のことや撮影の裏話などを伺いました。
——まず、それぞれ役を演じた感想をお聞かせください。
濱田 岳さん(以下、敬称略):足立監督は、役者にプレッシャーをかけないですし、ホントに楽しかったんですよ。撮影の日々も楽しかったけど、やっぱり監督のもとでやっていたから、嫌なことが一つもなかったです。
——あんなにチカから罵声を浴びせられていても……?
濱田:それはたぶん、僕と豪太のシンクロ部分で。怒られていても笑っちゃうタイプなんですよね。「うわ。この人、こんなに美人なのに、きったない言葉、言ってる」と思うとまた笑えてきちゃって。
水川あさみさん(以下、敬称略):(笑)
濱田:昨日から取材を受けてきて、水川さんは豪太のヘラヘラがムカついたって言ってるけど、水川さんが引き出したものでもあると思いますよ?
水川:いえいえ。そんなことないですよ。お芝居で豪太になっている濱田さんのヘラヘラ顔の横に、ホントにヘラヘラした監督もいるから、相乗効果でもう。腹は立ちますよね。「何、ヘラヘラしてんだよ!」みたいな(笑)。
濱田:(笑)
——水川さん、普段はあんな言葉、使わないですよね?
水川:なかなか使う機会はないですし、あんな罵声を人に浴びせることはないですね。いくら関西人の私とはいえ……タンツボとか(笑)。
濱田:言わないですよね(笑)。聞いたことないもん。
水川:でも、楽しかったですよ。普段使わない言葉を使ってるという、面白さがありましたね。
——使わない言葉だけに、言いづらかったとか怒りのパワーを出すのが大変だったとか、ありますか?
水川:言いづらいセリフっていうのはもとからなくて。普段使わない言葉だなって思ったりはするんですけど、脚本として会話が完成していたので、そこに対して不自然さはあんまり感じなかったです。監督自身も、変わった日本語使うよね?
濱田:使いますね。
水川:それで私も同じように言うようになっちゃったんですけど。助監督が……。
濱田:あ〜(笑)!
水川:汗でビショビショになってるのを見て、「ビッチョンコになって」とか言ったりしたんですね。ビッチョンコって。
濱田:面白い(笑)。
水川:面白いと思って、私もビッチョンコって言うようになっちゃって。
濱田:(笑)
水川:今でもそれがうつっちゃってますね。そういう監督の面白い言葉遣い……言葉遣いっていうか、人が使わないような言葉とかが、監督の作品の面白さでもあるなと思います。