サザンカ群の品種‘肥後入日の海’。熊本には幕末期に京都から持ち込まれたとされる40種に及ぶサザンカが継承され、「肥後サザンカ」と呼ばれて親しまれている。‘肥後の入日の海’は、肥後サザンカの紅花の代表品種。
10月〜翌年4月まで、異なる品種が咲き続ける
大学構内に入ったら、目指すは中央農道です。そこには畑がいくつも連なり、まるで田園のようなのどかな景色が広がっています。その畑沿いにサザンカが一列に植えられています。歩き出すのが楽しくなるようなサザンカの並木路。私はここを歩くといつも童謡『たき火」』の一節を口ずさみたくなります。
「さざんか さざんか さいたみち……」
鮮やかな花色がどこまでも続く並木路を歩いていると、気持ちが華やいで寒さも忘れます。
さて、サザンカの園芸品種は大きく4つのグループに分類され、それぞれ花期が異なります。
- サザンカ群…サザンカの自生種に近いグループで10月〜12月といちばん早く開花します。
- カンツバキ群…関東では寒椿と呼ばれる‘獅子頭’の実生、または後代と考えられるグループで花期は11月〜翌年3月。
- ハルサザンカ群…サザンカとツバキの種間雑種、またはその後代と考えられるグループで花期は12月〜翌年4月。
- タゴトノツキ群…‘田毎の月’という昭和初期からサザンカとして扱われてきた品種は、現在では中国原産のユチャの系統と考えられ、独立したグループとして扱われます。花期は11月〜12月。
バラも品種によって花期が異なりますが、サザンカはかなり花期に違いがあります。一度にすべてが咲くわけではないので、訪ねたときに咲いていない花があってもがっかりしないでください。その分バラよりもずっと長く花を楽しめるのですから。もう一度、時季をずらして訪ねると、別のサザンカとの新しい出会いが待っています。
カンツバキ群の品種‘昭和の栄’。紅花の代表品種‘獅子頭’の実生品種と考えられており、八重咲きや獅子咲きの豪華な花が咲く。ピンクと白が混じり合う比率は花によって異なり、一つひとつの花が個性的で見応えがある。
サザンカ群の‘田子の月’。一重咲きの中輪で、抱え咲きのふっくらした花姿が愛らしい。