64年大会のような選手本位のオリンピックに
松岡 話は変わりますが、来年は東京2020 オリンピック・パラリンピックが予定されています。先生はオリンピックについて、どのように思われていますか。
中村 オリンピックで最高の選手たちが最高のパフォーマンスをするのを観るのは楽しいですし、興奮します。選手ご本人も気持ちがいいでしょう。その活躍を称えてメダルを差し上げるのもいいと思うのですが、その結果、国同士のメダル競争になっているのは、ちょっと違うかなと思っています。
松岡 メダルの数を国力のアピールに利用しているとの声もありますね。もし先生ご自身がオリンピックをつくられるとしたら、どんなものにしたいですか?
中村 まず、あまり派手な開会式はしません。先日何かで読んだ記事に、橋本聖子さんがオリンピックの開会式で5時間も立たされたと書いてらして。自分が5時間立つことを想像して、それはないでしょうと思ったんです。
松岡 僕が出場したときは、選手村に戻ったのが夜中の2時でした。
中村 夜中の2時! 選手本位でやっているとはとても思えませんね。そういう意味では、1964年の東京オリンピックは本当に素晴らしかったです。全体的に素朴でしたが、開会式は日本人らしく1秒たりとも狂わず成功させて。
閉会式も同じようにやるのだろうと思ってテレビの前で待っていたら、選手たちが競技場にダーッとなだれ込んできて。よその国ならともかく、日本であんなことが起きるなんて思いもよりませんでした。でも、次の瞬間、もう大感激していました。あのときのことは忘れられません。
松岡 そうでしたか! 僕はその開会式で先生に呼びかけてほしいです。人間は生きものですよ、と。そして、あなたは今、本当に幸せですか?と。