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今、福澤諭吉に学ぶこと。紺野美沙子さんと巡る福澤諭吉の足跡

2020.09.28

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ゆかりの地に立ったとき、福澤先生がより身近に感じられました


──中津、大阪を訪ねて 紺野美沙子さん談


紺野さん
中庭に面した洪庵の書斎。洪庵は日中は往診などに費やし、夜になるとここで自身の勉強や翻訳に勤しんだ。「遅くまで書斎の明かりがついているのを見て、塾生たちも奮起したようです」と言う松永さんの説明に、「いい話ですね」と紺野さんも感じ入っていた。
今回初めて福澤諭吉先生ゆかりの大分・中津と大阪を巡り、先生の存在をより身近に感じることができて幸せでした。


中津は駅前に立派な銅像があり、「福沢通り」もあって、町のかたがたが福澤諭吉という人を大切に思っていることがよくわかりました。

5年の月日を費やして解体修復し、往時の姿に甦らせたという大阪の適塾は、何十人もの若者たちが集っていた場所だけあって、匂い立つような青春のエネルギーが感じられました。

刀傷が残る当時の柱
刀傷が残る当時の柱。入塾に身分は不問だったが、塾生には武士が多く、議論が白熱したときなどに切りつけたという。

道中、思い出したのが、福澤先生の名言の一つ「あたかも一身(いっしん)にして二生(にしょう)を経(ふ)るが如く(文明論之概略)」です。

この言葉にはさまざまな捉え方があるようですが、明治維新によって価値観が一変したことで「二つの生を生きた」と書いたのだと考えるなら、戦争もコロナ禍も、価値観の転換点という点では似ているように思います。

歴史を振り返れば、「二つの生を生きる」ということを、私たちの祖先は受け入れてきたんですね。

「新しい生活様式」への転換も、「そんなこともあるさ」くらいの気持ちで受け止められれば、少し気が楽になるのではないでしょうか。

変わりゆく世の中に一喜一憂することなく、心穏やかに暮らすことが大切だよと、先生が教えてくださっているような気がします。

私は真実緒方の家(うち)の者のように思い、また思わずには居(お)られません
── 福翁百話

今年2020年4月、文科省から、一斉休校中の子どもたちに本を1冊すすめてほしいと依頼され、『学問のすすめ』を選びました。

子どもはなんでこんな勉強しなくちゃならないのかな?などと思うものですが、この本を読むと、ちょっと勉強してみようかなと、意欲が湧くと思います。

そして、大人が読めば、自分の好きなことをもっと一生懸命やらなきゃ!と思える。私自身にとっても、一生大切にしたい一冊です。

2階の大部屋
全国から集まった塾生たちがひしめき合うように暮らしていた2階の大部屋。1人1畳の割り当てで成績順に場所を選べた。

●適塾
住所:大阪府大阪市中央区北浜3‒3‒8
TEL:06(6231)1970
表示価格はすべて税抜きです。
撮影/本誌・坂本正行 取材・文/清水千佳子 取材協力/慶應義塾福澤研究センター、慶應義塾広報室 スタイリング/石田純子〈オフィス・ドゥーエ〉 ヘア&メイク/金田恵理子 取材協力/松永和浩(大阪大学適塾記念センター 准教授)、松岡李奈(中津市教育委員会)

※参考文献/『学問のすゝめ』『文明論之概略』『福翁自伝』(以上岩波文庫)、『福澤諭吉 家庭教育のすすめ』『福翁百話』(以上慶應義塾大学出版会)、『女大学評論・新女大学』(講談社学術文庫)、『現代語訳 学問のすすめ』『現代語訳 福翁自伝』『現代語訳 文明論之概略』『おとな「学問のすすめ」』(以上筑摩書房)、『福沢諭吉 学問のすゝめ』(NHK 出版)、『子どものための偉人伝 福沢諭吉』(PHP 研究所)、『慶應義塾150周年記念 未来をひらく 福澤諭吉展』(慶應義塾)

『家庭画報』2020年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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