洗いざらしの心で、今ここを生きる
文/川野泰周(林香寺住職・精神科医)曹洞宗のお坊さんだった祖父が風呂場のタイルに書いた言葉です。
幼い頃の私は、祖父が住職をしていた龍珠院というお寺で、一日中汗まみれになって遊び、夕方になるといつもその四字を眺めながら湯船に浸かっては、子供ながらに「いい言葉だなぁ」と感じていました。
生まれた時は純真無垢な人間の心は、生い立ちや社会経験とともに、固定観念という名の絵の具で色付けされてゆきます。
でもきっと私たちはいくつになってからでも、石鹼で身体を洗うがごとく、この心を洗い清めることができる。
地域の人たちに永く慕われた、祖父からのメッセージです。
『家庭画報』2020年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。