難病にほかの病気の薬が使えるかどうかを調べる
患者由来のiPS細胞から分化させた細胞は治療薬の候補となる薬剤を探すのにも使われます。
薬の効果を予想するだけでなく、肝臓や腎臓、心臓のような薬の副作用が出やすい臓器の細胞を作製して副作用の程度を調べることもできます。
実際に京都大学iPS細胞研究所では、本来は骨がない場所に骨ができる進行性骨化性線維異形成症(200万人に1人の発症率で、日本での患者は推計で約80名)と家族性アルツハイマー病に、それぞれ別の病気の治療薬が使える可能性を見出し、現在、治験を進めています。
ほかにも、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの治験が行われています。
生命科学や医学の発展で、1個の細胞が持つ性質がわかるようになってきています。
また、患者由来のiPS細胞から分化させた細胞を三次元的に育てて臓器を模倣した形(オルガノイド)にし、病態や治療薬を調べる研究、ゲノム編集を加えたiPS細胞の研究も進んでいます。
「将来的には個人が自分のiPS細胞を作り、病気になったときに分化させて薬効評価をしたり、健康管理に使ったりできるようになるかもしれません」と齋藤さん。
次回はiPS細胞による再生医療を取り上げます。