2020年は7本の映画に出演。各方面からひっぱりだこの仲野太賀さん。石井裕也監督とのタッグは映画『町田くんの世界』以来となる。演じるのは、現代を生きる人たちが抱える気持ちを象徴する役
『舟を編む』や『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』、『バンクーバーの朝日』などで知られる石井裕也監督が3日で脚本を書き、制作決定からクランクインまで2か月というスピードで作られた映画『生きちゃった』。主人公・厚久役の仲野太賀さんがオファーを受けたのも、撮影に入る2か月ほど前だったといいます。完成したばかりだったと思われる脚本を受け取った仲野さん。自身が演じることになる厚久を、現代を生きる人が抱える気持ちを象徴するような役だと思ったそうです。
「思っていることを口に出せない、本音を言うことができない、そういう役なんですけど、それは厚久に限らず、現代に生きている人たちに、ものすごく通じるところがあるなと。本音と建前がある日本社会において、建前を除いて本音を言うことの難しさみたいなことを感じている人は多いような気がしていて。厚久という役は、そういう気持ちの象徴なんだと僕は思ったんです。
ただ、厚久は家族にも本音を言えない。それって、極端な設定のように思えるんですけど、本当に近い人たちにも言えないところからスタートして、約90分。『生きちゃった』を通して愛みたいなものを手探りで語る上で、そういう設定も映画においては成立するんじゃないかなと思いました」