40年間の名曲を網羅した2つのベストアルバム
佐野元春(さの もとはる)1956年、東京都出身。1980年にシングル『アンジェリーナ』でデビュー。シンガーソングライターとして独自の音楽活動を展開、世代を超え熱く支持され続けている。「約1年半前から準備してきました。2つ揃えれば、僕のキャリアが俯瞰できます」と話す佐野元春さん。
デビュー40周年を記念して、2020年10月7日に2つのベスト盤を発売した。
1つは、自身のレーベルからリリースした2005年以降の楽曲をまとめた『THE ESSENTIAL TRACKS MOTOHARU SANO & THE COYOTEBAND 2005-2020』。
もう1つは、デビューから自主レーベル設立前夜までの代表曲を収めた『MOTOHARU SANO GREATEST SONGS COLLECTION 1980-2004』。
「現時点での佐野元春のベストを届けたい、1つの作品として楽しんでもらえたらという気持ちで、いろいろな工夫をしています」との言葉どおり、収録曲は佐野さん自らが厳選し、曲順やバランス、音質にも素敵なこだわりが満ちている。
イラストレーターの牧野良幸さんが描き下ろした、タロットカードをモチーフにしたジャケットの絵も魅力的だ。
残念なのは、やはり着々と準備を進めてきた40周年記念コンサートが、コロナ禍で開催できなくなったこと。とはいえ、そこで歩みを止める佐野さんではない。
「こういう状況だからこそ、アートや音楽の力を発揮できるのではないか」と、精力的に新曲を発表。
貴重なライブ映像などを配信するイベントや、オリジナルグッズの販売なども展開中だ。
これらの収益は「SAVE IT FOR A SUNNYDAY」プロジェクトとして、コロナ禍で困窮する音楽制作者を支援する基金に充てられる。その柔軟な思考と実行力には感嘆する。
「前に進める隙間があれば、とにかく進んでいこうという感じです。コンサートができる状況を探っていきつつ、こんなときだからこそできる表現を追求していくつもりです」
音楽は「大切な誰かに対する捧げ物」であり、「エンターテインメントの先にある表現まで行き着きたい」と佐野さん。
同時代を歩む者として、ぜひその恩恵に与(あずか)りたい。
『THE ESSENTIAL TRACKS MOTOHARU SANO & THE COYOTE BAND 2005-2020』
生産限定盤 POCE-9399/400 4500円+税 『MOTOHARU SANO GREATEST SONGS COLLECTION 1980-2004』
通常盤 MHCL-30644~646 4000円+税 表示価格はすべて税込みです。
取材・構成・文/岡﨑 香 撮影/アライテツヤ
『家庭画報』2020年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。