「この脚本を自他共に納得感のある芝居に落とし込める役者は少ない」とプロデューサーが言う中、筆頭候補に揚がった高橋一生さん。観る人の想像力が働く、水面から水底をのぞいていくような作品
太平洋戦争開戦間近。皆が同じ方向を向くことを強いられていた日本で、自身の信じる正義を貫こうとする優作と、優作への愛を貫こうとする妻・聡子。そのために生じる欺瞞、裏切り、信頼、嫉妬、幸福……。世界中にファンを持つ黒沢 清監督が歴史の闇に初めて挑み、第77回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した映画『スパイの妻』で、夫を愛し抜く聡子を演じたのは蒼井 優さん。そして、高橋一生さんが聡明で正義を遂行するためには手段を選ばない優作に扮しています。
本作のオファーを受けて、快諾したという高橋さん。そこにあったのは、「この時代にこんなことをさせてもらえるんだ」という気持ちだったとか。
「いいとか悪いとかということではなくて、今はわかりやすいものが求められると思うんです。けれど、わかりやすいことに一極集中しすぎると、想像力を失ってしまう。この映画は、わかりやすさの真逆、水面から水底をのぞいていくような作品なので、人の想像力は働くだろうなと。その一つのパーツとしてお芝居を入れさせてもらえて、ありがたいなと思っていました。僕にとっては、とてもやりたいと思っていたことなので」