感想を伝えられたら、全部に「そうなんですよ」と言いたい
想像力を持って観る。そんな作品においては、自身の役・優作の心情についても「言っちゃったほうがいいですか?」と問いかけます。
「どういう思惑でそこにいたか、こちらからは完全に提示しているんです。けれど、観た人が何を感じたかに正しいも悪しきもなくて。“よくわかんなかったです”だったとしても、僕はたぶん“それが答えですよ”と答えます。こういうふうな思いでいたんですと言ってしまったら、手品師が種明かしをしているようなものですから。僕は、なんでもかんでもヴェールをかけたがる俳優なので、本当は表情なんて何も変えずに芝居をしていたいんです。そこからにじんでくるものをとらえてもらえるだろうと思って、僕はお芝居を続けてきましたし、黒沢さんには、それに近い形をやらせていただいたと感じています。
観ている人たちが“えっ? 今のって、ああいうこと? あのシーンの目線って、こういう意味だったの?”というふうに、僕が意図してないところでも感じてくれることもあるわけで。観た方がどういうふうに感じてくださったか、もし感想を聞けるような状況だったら、全部に“そうなんですよ”と言いたいくらいです(笑)。もし違っても、そう言っていたいなと思います。それだけ、水面下で行われていくような話なので、もし“私、岩魚(いわな)を見た”って言われても、岩魚じゃなかったんだけどな……と思いながら、“岩魚、すごく速かったでしょう?”と言いたいです(笑)」
優作の背景や生い立ちのようなものは、黒沢監督とも特に話さなかったそうですが、「そうじゃないと思ったら、言ってくださるんです」。