本作に出演して感じた、作品の舞台となっている時代と現在との違い
今年1月に公開された映画『ロマンスドール』でも夫婦役を演じた高橋さんと蒼井さん。2つの作品を通して、人間同士のやりとりが現代はメール、『スパイの妻』の舞台となっている1940年当時は往復書簡だと感じたそう。
「現代は情報量が多くて、ものすごい速度なので、いろんな感情がどんどん行き来します。けれど当時は、一つのことを重点的に置いていって、次の日に伝わるくらいの速度感覚なんです。その中で、本当に大切なことが的確に伝わっていく方法をとっていて、伝えようとするエネルギーが今とは違うような気がしていて。そんなことを感じながら演じていました」
『ロマンスドール』では、食卓を挟んで2人が深刻な会話をするシーンが。本作にも同じように優作と聡子が言葉を交わす場面があります。『ロマンスドール』では音楽が、本作では照明が、巧みに2人の心情や場の空気を演出。ただ、高橋さんは撮影時には照明を意識しておらず、「あとから“あ、そういうことか”という発見がありました」。
「観ると、意図があることが汲めて面白かったです。撮影のときは光のマジックにはまったく気づいていなくて。普段から、この位置に来てほしいとか、こういう明かりだからこうしてほしいとか、照明スタッフの方々が言ってくださるとおりには動いています。けれど、深い意図までは聞かない。照明部のクリエイティビティに関わってくることなので、僕は触れないほうがいいんじゃないかなと思っているんです。サッカー部がバスケ部に対して“あのときのシュートは……”というような話になっちゃいますから(笑)」
1940年代の、今からすれば面倒だったり煩わしいようなリズムが「人間には合っているんじゃないかと思っています」と高橋さん。